三菱重工業(MHI)と英インマルサット(Inmarsat)は1月25日、両社が2017年9月に締結したH-IIAロケットによるインマルサットの第6世代通信衛星「Inmarsat-6シリーズ初号機(Inmarsat-6 F1)」の打ち上げに向けた状況説明などを国内にて行った。
Inmarsat-6 F1は仏エアバス・ディフェンス・アンド・スペースが製造を担当するインマルサットの第6世代通信衛星の初号機。Lバンド周波数帯域とKaバンド周波数帯域のペイロードを同時に搭載した通信衛星で、従来のLバンドサービスにおける通信能力を向上させることで、移動体(携帯電話、船舶や飛行機など)向けの安全かつ低価格な通信に加え、IoT機器向け通信サービスの提供することを目的としているほか、Kaバンドを活用することで、インマルサットの第5世代通信衛星によるグローバルエクスプレス(Global Xpress)システムのサービス向上を目指すものとなっている。
InmarsatのRupert Pearce(ルパート・パース)CEOは、「インマルサットがMHIとパートナーシップを締結した際にお願いしたのは、オンタイムで安定した宇宙への道を実現してもらいたいということ。今回、我々がMHIを選択したのも、価格以上に、そのオンタイムでの打ち上げ実績(成功率)。我々としては非常に満足している」と、MHIとの関係が良好であることを強調した。
また、インマルサットは、Global XpressのKaバンドとFleetBroadband(FBB)のLバンドの両方を活用することで、海洋で高速データ通信を実現する「Fleet Xpress」を2016年3月末よりグローバルで提供してきたが、2017年8月に電波法施行規則等の一部を改正する省令(総務省令第五十七号)が告示され、国内での商用サービスが可能になったことにも触れ、「2017年は、海運事業者にとってのデジタル化が始まった年となった。従来から提供してきたFBBは世界中で4万5000隻が活用しているほか、Fleet Xpressもすでに2500隻以上の船に搭載され、高速通信による船舶のコネクティビティが生み出す付加価値が認められつつある」(Inmarsat MaritimeのRonald H. W. Spithout社長)とする。
Fleet Xpressの特徴的なところは、同社公認のアプリケーション開発企業(CAP)が、さまざまなアプリを開発・公開し、そのアプリごとに約束された帯域が確保されており、通信が常時行えるという点。「船舶がネットワークで常時接続されるということは、コミュニケーションが可能となるということ。これにより、運行に関するエンジンのモニタリングや、船員と地上とのビデオコミュニケーション、果ては船の設備などへの遠隔診断などが手軽に行うことが可能になる」とし、こうしたIoT船ともいうべき存在が、新たな価値を生み出せるような時代が到来しつつあるとした。
なお、日本でも、法改正の動きを受けて、サービスの提供が2018年より本格的に始まっているが、その市場性について同氏は「日本は外洋の航海が可能な大型船を扱える造船所が多く、その市場シェアも伸びていると聞いている。また、その大型船舶数も7000~9000隻と世界の6~7%を占めるほどの大きな海運事業のプレーヤーと認識しており、期待したい」(同)とするほか、今後、より衛星通信が高速化するなど、技術革新が進めば、船主と運行マネージャーがデータを共有するといっただけでなく、荷物を預けている物流会社などを巻き込む形で、物流そのものに変革をもたらすことも期待できるようになるとも述べ、「海運をIoTでつなげて、よりよいアプリを提供することで、業界の支援を続けていきたい」とし、今後は、クルーズ事業者が漁業関係者など、幅広い海洋事業者に向けたサービスの提供を目指していきたいとしていた。