住友電気工業は、波長7μm帯において、単一モードで80℃までの素子温度で連続発振が可能な、小型のDFB-QCL CANモジュールを開発し、サンプル出荷を開始した。ラインナップは、温調器内蔵型(Φ15.4mm)と無温調器型(Φ5.6mm)の2種類となっている。

  • DFB-QCL CANモジュール(左:温調器内蔵型、右:無温調器型)

    DFB-QCL CANモジュール(左:温調器内蔵型、右:無温調器型)

同製品は、同社の量子構造設計技術を用いて創出した独自の発光層構造を採用した、低消費電力DFB-QCLモジュール。CH4(メタン)やSO2(二酸化硫黄)、H2S(硫化水素)などの計測用として期待される7μm帯の波長において、汎用のCANパッケージで安定的に連続発振することが可能となっている。

DFB-QCLは、波長4~20μmの中赤外領域にて単一モードで連続発振が可能な小型センシング用光源で、大気汚染ガス、温室効果ガス、毒性ガスなどの高感度リアルタイム計測、および呼気分析や血糖値計測などの医療診断への応用が期待されている。従来のDFB-QCLは、素子自体の消費電力が大きいためモジュールの小型化や低コスト化が困難で、QCLを広く普及させる上での大きな課題となっていた。また、高温環境下での連続発振が困難なことも、レーザの使用を制限する要因となっていたという。

同製品は、従来のHHLモジュール(32x45x18mm)に対して、約8%(温調器内蔵型)、及び約1%(無温調器型)までの大幅な容積低減を実現。温調器内蔵型(Φ15.4mm)は、CANパッケージに温調器とDFB-QCL素子を収納しており、駆動するための専用マウントも同時に供給可能となっている。無温調器型(Φ5.6mm)は、CANパッケージにDFB-QCL素子のみを収納しており、外部に温調器を取り付けることにより、内蔵型と同等の特性を得ることが可能となっている。

また同製品は、QCL素子の消費電力を2W以下にまで低減し、発熱を大幅に抑制することで、80℃までの素子温度範囲で、連続発振、単一モード動作を実現している。さらに、素子温度20℃で30mW超、60℃でも10mW超(いずれも典型値)と、高感度センシング用として十分な光出力も実現。同モジュールを用いて、1.3ppbまでの高感度なメタンセンシングも実証されている。

同モジュールは、1月30日~2月1日に米国・サンフランシスコで開催されるSPIE Photonics West 2018、および3月14日~16日に中国・上海で開催されるLASER World of PHOTONICS CHINAに出展予定となっている。また、Photonics West 2018の招待講演にて、上記高感度メタンガスセンシングに関する発表を行う予定だという。なお同社は、5μm帯や8~9μm帯など、他の波長帯で発振するDFB-QCLの開発も進めているということだ。