東京大学(東大)は、核磁気共鳴法(NMR法)を用いて、副作用のシグナルを流す状態に対応するタンパク質が、膜貫通領域やリン酸化されたC末端領域において特徴的な構造を取ることを解明したと発表した。
同成果は、東京大学大学院薬学系研究科および次世代天然物化学技術研究組合の嶋田一夫 教授のグループによるもの。詳細は英国の学術誌「Nature Communications」に掲載された。
医薬品の30%以上は、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)と呼ばれる膜タンパク質に作用し、治療効果を発揮する。しかし、同時に副作用が生じることもある。これは、医薬品がGPCRを介して治療効果のシグナルと副作用のシグナルの両方を細胞内に流してしまうことに起因する。
したがって、GPCRが副作用のシグナルを流してしまう状態を抑えることができれば、副作用の軽減に有効であるが、これまでの研究では、治療効果および副作用を発揮するGPCRでどのような構造上の違いがあるかは明らかになっていなかった。
今回、研究グループは、NMR法を用いて副作用のシグナルを流す状態に対応するGPCRが、膜貫通領域やリン酸化されたC末端領域において特徴的な構造を取ることを解明した。
なお、研究グループは今回の成果について、副作用を発現する状態でのみ形成されるこの分子内相互作用を標的とすることで、既存の医薬品の治療効果を維持しながら、副作用のみを軽減させる新規の医薬品開発が可能となることが期待できるとしている。