東北大学は、開花・枯死したチシマザサ集団の更新過程を分析し、チシマザサが再び密生していく過程で、成長の速いクローンが生き残り、森林内の比較的明るい場所から暗い場所へと広がっていくことを明らかにしたと発表した。
同成果は、東北大の松尾歩 研究員(研究当時は、秋田県立大学生物資源学部在籍)、秋田県立大学生物資源学部の蒔田明史 教授、山形大学学術研究院の富松裕 准教授らの研究グループによるもの。詳細は米国の学術誌「Ecology and Evolution」に掲載された。
ネマガリダケという山菜としても有名なチシマザサは、雪深い日本海側のブナ林などに多く生え、しばしば高さ3m以上にもなって密生する。ササ類は多くの場合、100年以上とも言われる長い一生のうち一度だけ、広い範囲で同調して開花し、結実後に枯死する特異な性質を持つ。
また、地下茎を伸ばして広がり、数十mにもおよぶクローンを形成する。このように、ササが密生すると樹木の実生や稚樹の生育を妨げることから、林業の現場においてはササの管理が必要となっている。
今回、研究グループは、1995年に十和田湖畔のブナ林で開花・枯死したチシマザサ集団の更新過程を分析し、チシマザサが再び密生していく過程で、成長の速いクローンが生き残り、森林内の比較的明るい場所から暗い場所へと広がっていくことを明らかにした。
ササのように地下茎を伸ばして広がる植物には、侵略的外来種など、陸上生態系における優占種が多く含まれているため、今回の成果が、これらの植物が密生するメカニズムを解明する手がかりとなることが期待されるとしている。