Emilie Jolivet氏

フランスYole Développementの先端パッケージングおよび半導体製造分野の技術・市場アナリストであるEmilie Jolivet氏 (提供:Yole Développement)

フランスの半導体市場動向調査企業Yole Développementの先端パッケージングと半導体製造分野の技術および市場アナリストであるEmilie Jolivet氏は、1月17日から19日にかけて東京ビッグサイトにて開催されたエレクトロニクス製造・実装技術展「ネプコンジャパン2018」にて、「MEMSセンサーとICアドバンスド パッケージ:車とAIはいかにしてパッケージング ビジネスに挑戦するか」と題して講演を行った。今回、それに先んじて、同氏の講演資料などを拝見する機会をいただいたが、その内容を要約すると、運転支援車や自動運転車の登場で、車載MEMSセンサが多用されるに伴い、OSAT(半導体後工程受託製造業者)にMEMSパッケージや検査に対する大きなビジネスチャンスが巡ってこようとしているというものであった。

MEMS技術は、小型かつ高性能で費用対効果と信頼性の高いセンサを可能にしただけでなく、高温や過酷な環境での使用に耐えるセンサを実現した。その結果、MEMSデバイスの用途の多様性とその製造に関連するさまざまな技術は、設計から検査に至るファウンドリ、OSAT、およびMEMSベンダを巻き込む複雑で持続性のあるサプライチェーンを生み出すに至っている。現在、そうしたサプライチェーンからもたらされるMEMSの中で、「慣性MEMS」、「環境MEMS」、「光学MEMS」、「音響MEMS」、「高周波MEMS」の5種類が代表的なものと言える。

  • MEMS企業のビジネスモデルと2016年の売上高

    MEMS企業のビジネスモデルと2016年の売上高。横軸は業種(左から、ファウンドリ、ファウンドリサービスも行っているIDM、OSAT、ファブライト、ファブレス) (提供:Yole Développement)

MEMSのパッケージングに関しては、LGA(Land Grid Array)が依然として一般的に使用されるパッケージであるが、センサフュージョンや1つのデバイスの中に複数のセンサを集約するトレンドが出来つつあり、SiPやハイブリッド・パッケージ・プラットフォームに対する関心が高まってきているという。例えば、加速度計、ジャイロスコープ、および圧力センサを組み合わせたTDK/InvenSenseの7軸センサなどがこうした次世代パッケージ品に当たる。

従来、MEMSデバイスは、IDMやMEMSメーカーによって、パッケージングと検査が実施されてきた。これまでMEMSの検査は機密保持や顧客の信頼性に関わる問題のためにIDMなどが自身で行ってきたからである。そのため、OSATもMEMSパッケージング事業に参入してはいたものの、市場シェアを握るまでには至っていなかった。逆に言えば、MEMS検査市場がOSATの次の大きな商機になると言えるという。徐々にあるが、ロジックやMEMSチップが複数のサプライヤから供給されるようになると、OSATの設備でパッケージングを行うことが経済的に意味を持つようになってきたためである。

  • OSATのMEMSパッケージング・検査分野のシェア(%)

    OSATのMEMSパッケージング・検査分野のシェア(%) (提供:Yole Développement)

Yoleでは、MEMSパッケージング市場は、2016年の25億6000万ドルから2022年には64億6000万ドルの市場へと年平均成長率16.7%で成長すると見積もっている(MEMSベースのRFデバイスも含む)。およそ5年で倍増する市場は、OSATにとっても利益を享受できる期待の市場といえることとなる。

ちなみにMEMS検査は、最終アプリケーションにもよるが、コンポーネント価格の30%から90%を占めるという。OSATによっては、これを新たなビジネスチャンスとして狙っている会社もすでにあるという。例えば、Amkor Technologyは最近、MEMS検査を含む同社の検査能力に関する発表を行ったという。

なお、自動運転車の開発の中心的な役割としてセンサが注目されているが、コンシューマ製品の寿命、例えばスマートフォンであれば長くても3~4年程度であるのに対し、車載センサの場合、その利用期間を考えると、寿命も10年必要と見られている。コンシューマに近いインフォテイメント機器であれば、信頼性とコストのバランスをとることも可能かもしれないが、走行安全分野などでは、より多くの検査、バーンインテスト、最終パッケージ検査などが不可欠となってくる。そうなればコストがかさむこととなり、装置メーカー、MEMS/MEMSパッケージの設計会社、OSATが費用対効果の高いソリューションを生み出すために密接に連携することが求められる。こうした情勢の変化は、今後、OSATにとっての追い風になる可能性が高いという。