鶏卵の卵白たんぱく質から高強度ゲル材料を作ることに成功した、と東京工業大学などの研究グループがこのほど発表した。強度はゆで卵の白身の150倍以上で、身近なたんぱく質を原料とする新たな機能性材料として医療分野などでの応用が期待できるという。研究論文は英科学誌「NPG・アジア・マテリアルズ」に掲載された。
研究グループは、研究当時東京工業大学科学技術創成研究院の特任助教で現在、中国・東南大学生物電子学国家重点実験室准教授の野島達也氏と、研究当時東京工業大学科学技術創成研究院教授の彌田智一氏らが中心メンバー。
卵白を加熱するとゲル状に固まることはよく知られた現象だったが、新材料素材として利用する技術はこれまでなかった。野島氏らは、水中のたんぱく質を一瞬で凝縮させることができる独自の界面活性剤(イオン性界面活性剤)を2016年に開発していた。今回、卵白に水とこの界面活性剤を加えて独自の方法で混ぜて凝縮させ、さらに加熱することでゲル材料「卵白たんぱく質凝縮体ゲル」を作ることに成功したという。
研究グループによると、このゲル材料は80%水でできており、 柔らかさを持ちつつも、「34.5メガパスカル」というゆで卵の白身の150倍以上の強度を示した。その強度は1円玉に1,000キロの圧力をかけても耐えるレベルという。
野島氏らは、今回の研究成果を他のタンパク質に応用することにより、体内に残留せずに一定期間後には体内で吸収される安全な医療用素材などへの応用が可能、としている。
この研究は科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業総括実施型研究(ERATO)の一環として進められた。
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