2018年1月17日から1月19日まで、東京・台場の東京ビッグサイトにて開催されている「第2回 ロボデックス」において川崎重工業(KHI)は、小型汎用ロボット「RS007N」「RS007L」や、遠隔でのロボット操縦を可能とする「Successor」などを展示している。
まず、ブース内で目を引くのは、小型汎用ロボットのRS007NとRS007Lが、俊敏に動いている様子。昨年開催された「iREX 2017」ではこの位置に、転んでも壊れない人型ヒューマノイドを展示していたが、なぜ今回、決してインパクトがあるとは思えない「小型汎用ロボット」を前面に押し出したブースにしたのだろうか。担当者に聞いてみた。
この質問に回答していただいたのは、精密機械カンパニー ロボットビジネスセンター 営業企画部 部長の真田知典氏。このレイアウトにはどうやら、さまざまな企業の人手不足が関わっているという。
「人手不足の中で、どうにか、人がやっている作業をロボットに代替したいと考えている企業は多い。『景気がいいからロボットを導入してみようか』ではなく、『切実に人が足りないからどうしても作業をロボットに代替せざるを得ない』という状況。前回のiREX 2017で、これらの小型汎用ロボットはブースの奥に置いていたが、それでも人が集まった。今回はそのニーズを汲み、ブースの一番目立つところに設置した」(同氏)。
「技能伝承」でティーチングコストを削減
また、同ブースでは、新たなロボットのあり方を提案するシステムと題して、産業機器の遠隔操作を実現する「Successor」も展示されている。
同システムは、「コミュニケーター」と呼ばれる遠隔操縦装置を使うことで、離れた場所からであっても直感的な操作でロボットを操縦することができるというもの。実際にコミュニケーターを操縦し、シートを指定の場所に設置するという作業を体験したところ、非常に軽い力で作業を終えることができた。
同システムは、「技能伝承」をキーワードに開発されたシステムで、熟練作業員の作業データを蓄積し、AI技術でロボット自身に学習させることで、新人の作業員であっても、質の高い作業を再現することができるというもの。現在はまだ開発段階だが、今回のブース展示を通して、各企業から得たフィードバックを今後の開発に生かし、2019年の商品化を目指しているという。
真田氏は「ディープラーニングを用いてロボットを全自動で動かす、ということが流行っているが、あまり多くの回数をこなす必要がないときには、どうしても高いティーチングコストがネックとなる。そこで当社では、人が操縦するロボットを提案・普及していきたいと考えている」と語った。
最近、ロボット業界の盛り上がりをいたるところで感じるが、その裏には、深刻な人手不足の問題がある。川崎重工の小型汎用ロボットに多くの来場者が気をひかれていることからも、多くの企業は、5年~10年後に実用化の期待される技術よりも、目の前の問題を解決するシンプルな技術へのニーズを高めているようだ。