東京工業大学(東工大)は、食事の0.6%という少量の大豆イソフラボンをマウスに摂取させることで、除神経(神経の切除)に伴う筋萎縮を軽減することに成功したと発表した。大豆イソフラボンが、加齢性筋減弱症を軽減する食品素材として期待できるということだ。
同研究は、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の佐久間邦弘教授、ニチモウバイオティックスの天海智博社長、豊橋技術科学大学環境・生命工学系の田畑慎平院生らの共同研究グループによるもので、同研究成果は、12月13日発行の欧州栄養学会機関誌「European Journal of Nutrition」オンライン版に掲載された。
人間の骨格筋は身体の50~60%を占め、運動をするためや、体温を維持するために重要な働きをしているが、病気や障害、加齢により萎縮する。これを軽減するためのサプリメント(食品成分)の探索が行われており、大豆イソフラボンは有効な候補のひとつであった。しかし、筋萎縮予防に効果的であるとしたこれまでの研究は、食事中に20%の大豆イソフラボンを含んでおり、多量過ぎるため、人への応用は不可能だった。
佐久間教授らがマウスを用いて実験した結果、除神経により起こった筋細胞の萎縮程度は、食事の0.6%という少量の大豆イソフラボンを摂取した群でも有意に小さいことが分かった。除神経を施した骨格筋細胞内ではアポトーシスが起こり、筋細胞数が減ることで筋萎縮につながる。大豆イソフラボンの摂取は細胞内のアポトーシスの割合を有意に減少させた。したがって、大豆イソフラボンの摂取はアポトーシスを抑制し、除神経による筋細胞数の減少を食い止めることで筋萎縮を軽減したと考えられるという。
超高齢化社会を迎える日本では、ロコモティブシンドロームのひとつである加齢性筋減弱症(サルコペニア)が重要な社会問題になりつつある。サルコペニアを軽減する薬剤の候補はいくつかあるものの、食品で有効な素材は現在、見当たらない。同研究チームは、大豆イソフラボンの摂取が、サルコペニアを軽減できるのかどうかについて、今後、さらに詳しく検証していくということだ。