情報通信研究機構(NICT)は1月11日、量子コンピュータでも解読が困難な格子理論に基づく新暗号方式「LOTUS(ロータス)」を開発したと発表した。
詳細は、4月に米国フロリダ州で開催される会議「First PQC Standardization Conference」において発表される予定だという。
インターネットを利用するときに使うWebブラウザなどには、パスワードやクレジットカード番号などの重要な情報を暗号化する機能が組み込まれている。この中で、RSA暗号や楕円曲線暗号などの公開鍵暗号が使われている。
しかし、現在広く使われているRSA暗号や楕円曲線暗号は、ある程度性能の高い量子コンピュータを使うと簡単に解読されてしまうことが数学的に証明されている。近年、量子コンピュータの商用販売や無償クラウド利用が提供されるなど、量子コンピュータの高性能化・普及が進んでおり、現行の公開鍵暗号では安全な通信ができなくなる可能性がある。
今回開発されたLOTUSは、暗号文の復号の際にその構造をチェックする機能を持っており、現在の公開鍵暗号と置き換え可能な汎用性も有している。さらに、格子理論に基づく暗号技術の安全性評価手法を同時に開発し、複数の格子暗号同士を統一的な基準で比較することができるという。
また、LOTUSの特徴は、量子コンピュータでも解読が難しい耐量子性を持ち、また、ブラウザ、データベースなどに組み込み可能な汎用性を持つことなどが挙げられる。そのため、暗号の専門家でなくても安全に使うことが可能であるとしている。
米国国立標準技術研究所(NIST)が、現在の暗号方式を置き換える耐量子計算機暗号を世界中から公募し、その中から書類選考を通過した69件の候補を公開した。同社が開発したLOTUSもこの候補の1つに入っており、今後数年かけて、これらの候補の評価・選定が行われるとしている。