千葉大は、鉄磁石を利用してこれまでの1000分の1以下の薄さとなる有機分子膜作成を実現したと発表した。同技術で分子膜を薄くすることで、より小さな電力で分子膜を機能させることができ「省エネ」が実現する。
同成果は、千葉大学大学院工学研究院の山田豊和 准教授、稲見栄一 特任講師を中心とした千葉大学と京都大学の共同研究グループによるもの。詳細は英国の学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
近年、有機ELディスプレイなど、非常に薄い膜を使用した家電製品が実現されつつある。これにより、壁掛けテレビや曲がるテレビが実現化されたほか、スマートフォンのディスプレイにも有機分子膜が使われているようになった。
なぜ、薄い膜がよいのだろうか? 分子膜を薄くできれば、膜作成に必要な分子の量を節約でき、「省資源」化につながる。さらに薄くすると、より小さな電力で分子膜を機能させることができ「省エネ」が実現する。
研究グループは、走査トンネル顕微鏡(STM)という超高感度の顕微鏡観察から、既存の手法で分子膜を薄くしていったところ、室温では1個1個の分子が動いてしまい、安定な膜にならないことを発見した。
しかし、鉄磁石の力をかりると、この分子の動きがとまり、非常に安定な分子膜となることを発見した。さらに、その分子膜の厚さは、現在使われている分子膜の1000分の1以下の0.0000003mmにまで薄くすることに成功したという。