スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームは、ペロブスカイト太陽電池の安定性および経年劣化評価手法の標準化に関する提案を行った。ペロブスカイト太陽電池の実用化を進める上で課題となっている安定性や劣化の問題について、研究者間で評価方法に関するコンセンサスを作ることをねらっているという。色素増感型太陽電池の発明者として知られるマイケル・グレッツェル教授らの研究室が行った研究であり、論文は「Nature Energy」に掲載された。
近年、ペロブスカイト太陽電池の変換効率は急速に向上しており、商用のシリコン太陽電池に匹敵する22%程度という高い値が報告されるようになってきている。その一方で、最も耐久性が高いとされるペロブスカイト太陽電池でも、安定性については数年というオーダーでの議論が行われているのが現状で、実用上要求される25年といった長期安定性からはまだ相当開きがある。
ペロブスカイト太陽電池を実用化するには、安定性を保持できる期間を現状より1桁上げて、シリコン太陽電池に匹敵する寿命を実現する必要がある。そのための研究開発が世界中で進められているところだが、デバイス安定性の測定手法に一般的基準が存在していないため、異なる研究室・企業が出してきた研究成果の相互比較が難しいという問題があるという。また、他種の太陽電池ですでに開発されているデバイス安定性の測定標準についても、ペロブスカイト太陽電池向けに修正して適合させる必要がある。
研究チームは今回、すべての使用環境におけるペロブスカイト太陽電池の安定性評価を標準化する提案を行った。そのために、日光照射、温度、大気、電気的負荷など、ペロブスカイト太陽電池を劣化させるさまざまな環境要因の影響に関して調査研究を行い、またこれらの要因を体系的に組み合わせた試験を行っている。
今回の研究結果として、ペロブスカイト太陽電池に特有な挙動によって実験の結果がどのように変化するかを示すことができたとしている。たとえば、ペロブスカイト太陽電池には、光の照射で生じた劣化が暗闇に置くことによって回復するという性質がある。太陽電池を実際に屋外で使用する場合には自然の昼夜サイクルに置かれるので、暗闇に置くことでダメージが回復するという性質はデバイス劣化を定義する上で重要な意味をもつ。また、産業界で太陽電池の寿命を記述するために使われている基準に関する知見も、こうした研究によって変わることになるとする。
安定性評価法の標準化ができれば、特定の劣化要因を体系的に分離して扱えるようになるので、ペロブスカイト太陽電池の劣化についての理解が深まり、デバイス寿命を向上させることにつながると期待できる。また、研究チームは、自分たちの作った標準を研究者コミュニティに強制しようとしているのではなく、どのような標準にするべきかという議論のための試案を出すのがねらいだとも強調している。標準化の議論を行うために、より広範囲の研究者が参加する専門グループが形成されることを期待するとしている。