国立極地研究所(NIPR)は、八王子隕石とされる隕石の小片(約0.1g)を詳細に分析したと発表した。その結果、分析した隕石小片は八王子隕石ではなく、曽根隕石である可能性があることが分かったという。

同成果は、NIPR 地圏研究グループの山口亮 准教授、今栄直也 助教、NIPR 極域科学資源センター 南極隕石ラボラトリーの木村眞 特任教授、NIPR 宙空圏研究グループの片岡龍峰 准教授、国立科学博物館 理工学研究部 理化学グループ長の米田成一氏、九州大学大学院 理学研究院 地球惑星科学部門の岡崎隆司 助教、国文学研究資料館 古典籍共同研究事業センターの岩橋清美 特任 准教授、総合研究大学院大学 学融合推進センターの小松睦美 助教らによるもの。

  • 八王子隕石

    分析した隕石。図中の黒線は5mm (国立科学博物館所蔵) (出所:国立極地研究所Webサイト)

1817年、現在の八王子市中心部に多数の隕石が落下した隕石(八王子隕石)については、当時の史料に記録が残されており、約10kmの範囲に、長さ1m程度のものを含む多くの破片が落下した隕石雨だったことが分かっている。落ちた隕石の一部は天文方(てんもんかた)によって調査されたが、それらはすべて散逸し、失われてしまっていた。

1950年代になり、京都の土御門(つちみかど)家の古典籍の中から、隕石小片(約0.1g)が発見された。「隕石之事」と書かれた紙包みの中に、八王子隕石について書かれた紙に挟まれて入っていたことから、この小片は八王子隕石の1つであると考えられていたが、同じ包みの中に曽根隕石(1866年、現在の京都府京丹波町に落下した約17kgの隕石)について書かれた紙も入っており、曽根隕石の一部である可能性もあった。

研究グループは今回、「はやぶさ」が持ち帰った粒子の分析にも用いられた技術で分析を実施。隕石の小片から、一部を割りとり、研磨薄片を作成し、光学顕微鏡による組織観察および電子線マイクロアナライザによる鉱物組成の分析を行った。また、別の破片を用いてX線回折装置による分析、希ガスの分析も実施。さらに、比較のため、曽根隕石に対しても同様の分析を行った。

その結果、分析した隕石小片は「普通コンドライト」と呼ばれる種類で、曽根隕石と同じ結果であることが分かった。加えて、X線分析、希ガス組成、宇宙線照射年代においても、分析した小片と曽根隕石の違いはほとんど見つからなかった。

これらの結果から、分析した隕石小片は八王子隕石ではなく、曽根隕石である可能性があるという。一方、今回の組成は隕石の中でも比率の多いものであり、八王子隕石と曽根隕石がたまたま同じタイプの隕石であった可能性も十分にあるとのこと。

なお研究グループは、「未だ隕石の一部が八王子市内の旧家などに残っているかもしれない」としており、今後広く一般に呼び掛けることで、八王子隕石の発見と分析を進めていくとしている。