総合市場動向調査企業である米Gartnerは1月4日(米国時間)、2017年の世界半導体売上高は、前年比22.2%増の4197億ドルに達したとの速報値を発表した。半導体メモリは年間を通して慢性的な供給不足に陥ったため、前年比64%の成長を遂げ、全半導体売上高の31%を占めた。
Gartnerの調査担当副社長であるAndrew Norwood氏は「2017年は、世界最大のメモリサプライヤである韓Samsung Electronicsが14.6%のマーケットシェアを獲得し、Intelが1992年以来保ってきたトップの座を奪った。メモリは、2017年の半導体売上高増加分の2/3以上を占め、半導体最大のカテゴリになった」と述べている。
メモリ売上高急上昇の原因は供給不足による価格高騰にある。NANDの年間平均販売価格は、前年比17%となり史上最高を記録。DRAMも同44%増と高い値を記録した。
各種メモリを搭載した製品を販売するメーカーは、メモリ価格の高騰を吸収しきれず、メモリの値上げ分を最終製品に転嫁せざるを得なかった。このため、PCからスマ―トフォンに至るまですべての製品が値上げせざるを得ない状況に追い込まれた。
長年君臨してきた首位から転落したIntelは、2017年に同6.7%増と売り上げを伸ばしたが、メモリ特需によるSamsungの伸びにはかなわなかった。Intelは、クラウドおよび通信サービスの需要によりデータセンタ向けプロセッサの売り上げが同6%増となったほか、PC用マイクロプロセッサ(MPU)の売上高も同1.9%増の伸びを示ている。PCの売り上げが伸びたのは、従来のデスクトップから2 in 1やウルトラモバイルPCへの市場移行に伴い、より価格の高いモバイルCPUの販売が伸びているためである。
Samsungの繁栄は砂上の楼閣か
前出のNorwood氏は、「現在のランキング順位はそれほど長くは保たれないかもしれない。Samsungの好業績は文字通りメモリの元となっているシリコン -文字通り砂- の上に作られている。メモリ価格は今後、はじめはNANDから軟化し、中国のメモリ生産能力が増える2019年にはDRAMの価格も値下がりするだろう。そうなれば、Samsungは、いままで獲得した利益の多くを失ってしまうかもしれない」と述べている。
2017年は合併や買収に関しては、比較的静かな年だったといえる。QualcommのNXP買収は2017年に完了すると予想されていたが、中国やEUの独占禁止法審査が未完のため完了できなかった。2018年には買収を完了させたいところだが、今度はBroadcomがQualcommの買収を仕掛けてきているので、状況は複雑になっている。Norwood氏は「Broadcom、Qualcomm、NXPの2017年の売上高総計は412億ドルであり、これはSamsung、Intelに次ぐ第3位に相当する。Broadcomがこの買収を確定し、Samsungのメモリからの収入が今後、予想通り落ちるのであれば、Samsungは次のメモリ不況に陥るとみられる2019年には3位にまで転がり落ちる可能性がある」と語っている。
なお、ランキングの9位に成長率120%でWestern Digitalが入った。同社は2016年に東芝とNAND事業で協業していた米SanDiskを買収したが、2016年のWestern Digitalの売り上げには、買収以前のSanDiskの売上分が含まれていなかったため、SanDiskの売上高を含んだ2017年の売上高の伸びが大きくなったという。