IoTベンチャーMomoは12月20日、IoTプラットフォーム「Palette IoT」、およびそれを活用したスマートフォンによる「ながら運転」撲滅ソリューションを発表した。

  • 「Palette IoT」概要

    「Palette IoT」概要

  • IoTベンチャーMomo 大津真人 代表取締役

    IoTベンチャーMomo 大津真人 代表取締役

コーディングレスで「安価」なIoTプラットフォーム

「Palette IoT」は、コーディングをすることなく、スマートフォンアプリでIoTソリューションを構築可能にするプラットフォーム。同社の大津真人 代表取締役は、IoTの普及率が当初の予測より伸びが鈍い状況を挙げ、開発にかかるコストが原因と指摘。現状のIoTプラットフォームが開発言語に依拠していることから、多くの企業は受託案件として進めざるを得ず、金銭的・時間的な開発コストが高くなっていることが障壁になっていると説明した。

その上で、「以前はWebで情報発信するにはHTMLを理解し、Webサイトを構築する必要があった。しかし今はブログサービスがあるため、コーディングを理解しなくても情報発信が行えるようになった。このような変化は、IoT分野でも起こせるはず」と、同プラットフォーム立ち上げの狙いを語った。想定ユーザーは「ブロックでのプログラミングに抵抗を感じる層」で、開発した内容はアプリ内での売買も可能にする。

安くて「圏外に強い」IoT環境の構築

同プラットフォームは、スマートフォン/タブレットアプリ、センサを取り付けた送信側基板、そしてスマートフォンに取り付けて使うリングホルダ型の受信機で構成されている。温湿度センサや3軸加速度センサなど8種からユーザーが用途に合わせて選択可能で、通信はWi-SUN(特定小電力)基板によって行う。通信可能距離は1.5km範囲内だが、最大30台の端末をバケツリレー方式で接続する(マルチホップ通信)ことで、最大数十kmまでのデータ送信を可能にする。

  • 「Palette IoT」ハードウェア構成

    「Palette IoT」ハードウェア構成

  • 「Palette IoT」アプリの概要

    「Palette IoT」アプリの概要

大津代表は、「Palette IoT」の主な強みを「導入費用が安価である」こと、そして「圏外に強い」ことだと解説。前者について、参考価格は明かせないとしながらも、「数百~数千万円かかる既存のIoTシステムを、数十分の一の費用で構築可能」として、十分な競争力を持っているとコメントした。

後者については山中の土砂崩れ検知など、通信が不安定な場所での利用も可能であることを挙げ、「現状稼働しているIoT環境の半数は置き換え可能と考えている」とアピールした。

今後、法人への販売をメインにする中で、教育分野への展開や個人への販売も視野に入れていくとのこと。基板・センサのセット販売と聞くとメイカー方面への引き合いも多そうに感じたが、あくまでもノンコーディングがコンセプトであり、セキュリティの問題もあるため、プログラミングによるハックは行えない仕様となると語った。

スマホが引き起こす「ながら運転」を防ぐソリューション

また、「Palette IoT」を活用した「ながら運転」撲滅ソリューションも同時に発表された。これは、運送業などの事業者が、ドライバーが運転中にスマートフォンを操作することによる事故をなくすために導入することを想定したもの。基板を組み込んだ専用のケースを業務用のスマートフォンに取り付けて運用する。運転席の下にビーコンを設置してケースと通信させ、範囲内では操作が一切行えないようにする。

つまり、運転席にいる間はスマートフォンがほぼ操作できない状況になる。当初、停車時は操作制限を解除しようと考えたが、導入を検討した事業主から、車の動作に関わらず制限してほしいと要望があがった。それは、信号待ちの際にスマートフォンを操作し、それに夢中になっていたことから周囲への注意がおろそかになった結果として事故を起こすケースが多かったからだという。

  • 「ながら運転」撲滅ソリューション

    「ながら運転」撲滅ソリューション

  • 「ながら運転」撲滅ソリューションで用いる専用ケース

    「ながら運転」撲滅ソリューションで用いる専用ケース

このソリューションは、大手飲料メーカー、運送業といった計2者より400セットの納品依頼を受けているほか、東京海上日動火災保険などとの合同実証実験を2018年1月より行っていく。前述の2社に対しては東京海上日動火災保険による保証スキームと併せてソリューション提供し、今後は保険料率との連動も行っていく想定だ。また、これ以外にも警備、介護業務などで、パートナー企業と共に「Palette IoT」を活用した実証実験を行っていく。

Momoは、親子向けのスマートフォン利用管理システム「OTOMOS」の開発から始まったベンチャー企業。同氏は会見の終盤、自身もスマホをついチェックしてしまうということを吐露した上で、「ベンチャー企業の多くは、アプリゲームなどで収益を得るために『いかにユーザーをスマホに近づけるか』という発想で事業を行っている。しかし、行き過ぎるとユーザーの生産性や幸福度を低下させてしまう。ひとつくらい、『スマホを使わせない』方向に進むベンチャーがあってもよいのでは」と、自社の立ち位置についてコメントした。