東北大学(東北大)は12月19日、ミジンコを使った実験により、植物を食べる動物(植食者)は不足する栄養を満たすために、柔軟な方法をとっていることが分かったと発表した。

同成果は、東北大 大学院生命科学研究科の占部城太郎 教授の研究チームによるもの。詳細は、生態学の国際誌「Ecology Letters」(オンライン版)に掲載された。

植物は成長に必須な栄養元素の中でも、特にリン含量が動物に比べて低いことが知られている。このため、植食者はリン不足になりやすいことが実験などで示されて来た。ところが、野外では餌となる植物のリン含量が少なくても、植食者の成長は必ずしも低下しない。この実験結果と野外での現象の乖離は生態化学量論や栄養生態学の謎だった。

  • ミジンコ

    実験に用いたミジンコ Daphnia pulicaria(プリカリアミジンコ)。湖沼に生息する動物プランクトンの1種で、さまざまな藻類からなる植物プランクトンを餌として食べている (出所:東北大学Webサイト)

研究チームは今回、ミジンコを植食者として用いた実験により、この謎の解明にあたった。まず、緑藻・珪藻・ラン藻を異なる条件で培養し、これら藻類の混ぜ合わせを変えて化学組成の異なるさまざまな餌を作成した。次いで、それらの餌をミジンコに与え、摂食速度やリンに対する同化効率、および成長利用効率を調査した。

その結果、餌となる藻類全体のリン含量が低下すると摂食速度が増加すること、複数の植物プランクトン種を摂食するとリンに対する同化効率、すなわち消化管でリンを吸収する割合が上昇すること、特定の脂肪酸を持つ植物プランクトン種が餌に含まれると同化したリンの成長に対する利用効率が上がることが判明した。

研究グループはこの一連の結果に関して、植食者は食べる量だけでなく同化や利用効率をも柔軟に変化させて栄養要求を満たしていることを示唆するものだとしている。これは、「なぜリン含量の低い餌を食べても植食者の成長速度は低下しないのか?」という謎を解くものだといい、環境によって植物の栄養成分は変化すること、それ故多種の植物の存在が動物の成長を支えるうえで重要であることを示す結果となるとのことだ。