スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)とコルドバ大学(スペイン)の研究チームは、ペロブスカイト太陽電池に有機化合物のグアニジンを添加することで、デバイスの長期安定性が向上したとする研究成果を発表した。変換効率19%のセルについて1000時間の加速劣化試験で安定性が確認できたとしている。研究論文は「Nature Energy」に掲載された。
安価に製造可能なペロブスカイト太陽電池は近年、シリコン太陽電池に匹敵する変換効率が出るようになってきているが、実用化を進める上では耐久性の低さが課題とされている。屋外などの実環境で長期使用すると、デバイスの劣化が進み、変換効率が急激に落ちてしまうのである。このためペロブスカイト太陽電池の長期安定性を確保することを目指した研究が活発に行われるようになっている。
安定性を高める方法として、ペロブスカイトの結晶構造中に異種のカチオン(正電荷をもつイオン)を導入するというやり方がある。これまでに、セシウムやルビジウムなどの無機系のカチオンをペロブスカイト組成中に混合することによって安定性が向上したという報告があるが、製法が難しくコストも上がってしまうのが難点であった。一方、合成が容易な有機系カチオンを用いて変換効率と安定性の向上を同時に実現したという報告はこれまでなかった。
研究チームは今回初めて、有機系分子グアニジンのカチオン(CH6N3+)をメチルアンモニウム-ヨウ化鉛系ペロブスカイトに導入することによって、ペロブスカイトの安定性が向上することを確認し、報告した。
ペロブスカイトの結晶構造の安定性を表す指標として、ゴールドシュミット許容因子限界(Goldschmidt tolerance factor limit)と呼ばれる値がある。許容因子の値は結晶構造を構成している各サイトのイオン半径をもとに計算するもので、安定したペロブスカイト構造になるためには、この値が1付近にあることが必要となる。
グアニジンを導入したペロブスカイトでは許容因子=1.03となり、理想値である1にかなり近くなることがわかったという。
グアニジン導入型ペロブスカイト太陽電池は、研究室での1000時間の加速劣化試験の結果、平均19%程度の変換効率を維持し、長期安定性が確認できたとした。加速劣化試験は60℃の環境で連続使用するというもので、同試験での1000時間は、実環境での使用に換算すると1333日(3.7年)に相当するという。ただし、標準的な太陽電池の認証評価では、これ以外にも温度の周期的上下変動、高温多湿といった条件での試験も要求される。