最新の工作機械を活用
曙工業は金属・非金属の切削加工を行なっている会社で、主に自動車部品を製造しています。最近では、航空機や産業用ロボット、医療器械などの分野にも進出しています。素材を一から削り出す総切削と鋳物素材など、ある程度形がある異形材の削り出しの両方に対応し、また試作品のような単品の生産から月産10万個の大量生産まで幅広く対応していることが特徴です。
現在、製品に対する顧客の要求精度は非常に高くなっています。また、同じ部品でも 「軽く、丈夫に」が求められ、使用する素材がステンレスやチタン、インコネルなどの難削材が増え、加工の難しさが年々増加しています。
幅広い業種のさまざまなニーズに対応するため、同社で導入している工作機械の種類は多く、NCコントローラ(CNC)の種類と合わせると、そのバリエーションは非常に多岐にわたります。シーメンスPLMソフトウェアの「NX」は、少量生産品や難削材の加工、すなわちさまざまな機械と段取りを必要とすることになる業務を支える要として活用しています。
NX導入のきっかけは当時抱えていた大問題でした。5軸対応の最新の工作機械の導入に際し、既存の5軸対応のCAMソフトでポスト処理のソフト開発を当時のシステム ベンダーに依頼しました。しかし3ヶ月経っても満足できるレベルに達しませんでした。そこでNXを導入し、NX CAMのポストビルダー機能を使って開発することになりました。導入当初はシーメンスPLMソフトウェアのサポートもあり、約2週間で新しい機械を動かすことができました。
「機械が動いた時は救われた、という気持ちでした。その後の受注拡大にもつながっています」と製造部技術部長の宇野政義氏は当時を振り返ります。
支給データの利用を改善
同社の業務の中でCAD/CAMソフトの役割は、顧客から支給されたデータの取り込みから加工用モデルの作成、NCデータの出力までです。また現在でも1/3くらいは図面で支給されており、その場合は3Dモデルの作成も行います。
支給されたデータでは、モデルの整合性が取れていない、公差情報が入っていないなど、加工、製造の観点から見れば課題も多くあります。低い品質のデータを使うことでNCプログラミングに問題が起こります。「製造の後工程になって発生する問題は、モデル修正に必要とする工数を捻出できないことが大半の原因です」と宇野氏は言います。
NX導入以前は、従来のCAMシステムで公差をある程度見込んでカッターパスを分けて生成するなどして対応していました。この方法は作業が難しいうえ、間違いの原因にもなります。「このようなノウハウは個人に依存したもの。会社組織として対応できる力が弱かった」と宇野氏は言います。
早い段階での問題解決
NXをCAD/CAMのすべてのオペレーションに使うことでより良い製造プロセスを構築しました。支給される3Dデータを取り込み、モデルの整合性の確認、モデルの修復を経 て加工工程を確定します。その後、各工程やオペレーションに合わせた加工用モデルの作成を行い、最終的にNCデータを出力します。
NX導入以前は、支給されたモデルのどこに、どんな問題があるかは分かりませんでした。その状態で加工用のモデルを作成していたため、後工程になってトラブルが発 生することも少なくなく、その対応に多くの時間を割いていました。今ではNXの最新のモデル編集機能であるシンクロナス・テクノロジーを活用して支給データを問題なく取り込み、NCプログラミングと加工用に最適化しています。「ジオメトリ試験はビジュアルで分かりやすい。どこをどう修正すれば良いか判断できる。NXのモデルを分析する 能力、モデリング能力は非常に高い」と宇野氏は言います。
以前はモデルの修正に3、4時間を要していましたが、NXでは1時間ほどに短縮できました。また、以前のような後工程での作業がなくなり、トラブルを回避できるようになったため、多いもので80%、少ないものでも30%の作業時間の効率化につながっています。
また、同社では治具の設計、製造もすべて自社で行っており、ここでもNXを活用しています。以前は治具設計を違うソフトで行なっており、事前に整合性の確認が困難でした。NXを使うようになってからは、治具の設計をNCプログラミングと同じシステムで、機械の取り付けを考慮して行うことができます。取り付けた場合をデジタルに表示し、 治具の設計を視覚的に確認、NXプログラムを検証できるので、実際に取り付けた場合の問題を事前に回避できるようになりました。
「問題を最小限に抑えた状態で、実際の加工工程に持っていける。加工の段階でも、NX CAMの加工シミュレーションを利用して、問題を事前に減らすことができる。取り付けの完全なデジタルコピーを作成しNCプログラムを使い、NXで加工プロセスを正確にシミュレーションすることで、機械をもっと活用できるようになる」と、同社の業務でNXを一気通貫で活用するメリットを宇野氏は話します。
多種多様な機械への対応
幅広い業種の多様な顧客のニーズに応えている同社にとって、CAMソフトでは多種多様な機械が実際に稼働できるデータを作り出せる必要があります。同社ではNXの包括的なプログラミング機能を使用し、最新の5軸ミリングや複合加工機などの様々なCNC加工機の高精度なパスに柔軟に対応しています。
「NXの幅広く専門的なプログラミング機能により、多種多様な機械を稼働できる。先進のCAM機能のおかげでわが社は自動車や工作機械といった多様な業界の高品質 な製品を継続的に提供できる」と宇野氏は話します。
機械のパフォーマンスを最大化するためには機械にあわせたデータを作成しCNCを効率的に駆動する必要があります。NX CAMのポストプロセッサはさまざまな機械にあわせカスタマイズしたプログラムーを出力します。あるジョブに対し特定の機械でNCプログラムに調整が必要なときは、NX CAMのポストビルダー機能が役立ちます。
「ポストビルダーはユーザー自身でポストプロセッサーを編集するだけでなく、各々の機械のポストの開発をする必要がある。ポストプロセッサーを簡単に修正、開発で きるので、我々のように多様な機械を抱える会社にとり、非常にメリットがある」と宇野氏は話します。
ひとつのCAMを使って多くの機械の複雑なジョブをプログラムできる柔軟性は、企業の継続的な事業拡大を可能にします。
設計・製造プロセスの中核にNXを置くことで、同社はプロセス全般を自動化、標準化改善できました。さらにデータをNXに蓄積することで、従来からの課題でもあった個 人に依存したノウハウを他の担当者が再利用できるようになり、組織としての対応力が向上しました。
品質管理への適用
顧客ニーズの多様化、要求精度の高度化、加工の難易度の高まりは、同時に品質管理の高度化も要求します。同社では3Dモデルを取り込める3次元測定器を導入しています。ここでも、NXで設計したモデルを使用し自動検査プログラムを作成します。また将来は、測定器とNX CMM検査プログラミングの連携をさらに進め、より高いレベルでの品質管理を目指しています。
サポート体制への信頼感
実際のモノを製造している人にとっては、どれだけ良い機械、ソフトを揃えても、実際の製造に至らなければ意味がありません。「機械もソフトもサポートが弱いと生産が止まる。その点、シーメンスPLMソフトウェアのサポート力には感謝している」と、NX導入のきっかけとなった最新の工作機械を稼働させた時点から現在に至るまでのサポートについて高く評価しており、このサポートが今後も維持されるものと期待しています。
本記事は、シーメンスPLMソフトウェアから寄稿していただいたものとなります。そのため、記事の初出は同社Webサイトに掲載されているコンテンツとなります。