Microsoftは現地時間11日、世界中で地球環境の保護に取り組む個人や組織に向けて、AIテクノロジー提供など今後5年間で5千万ドル(約56億円)の投資を行うことを発表した。
同社は今年の7月にロンドンでAIを未来の地球に役立てるプロジェクト「AI for Earth」を発表し、水や農業、生物多様性や気候変化など地球上での持続性ある活動への取り組みを行う研究者やチームへの支援、AIやクラウドを活用した2百万ドル(約2億円)規模の支援を表明。テクノロジーリソースの提供や最新技術のトレーニングや教育を行っている。
今回、公式ブログに投稿を行った同社President and Chief Legal OfficerであるBrad Smith氏は、ちょうど2年前の2015年12月12日に採択されたパリ協定(Paris Agreement)を引き合いに、テクノロジー企業の一員として、地球が直面している環境問題に対してさらなる支援を行うと「AI for Earth」に5年間で5千万ドル(約56億円)を超える支援拡張を発表した。同氏は、Microsoftを代表してこの声明をパリで行っている。前回を上回る大きな規模での投資には、AIを活用した効果が如実に表れてきたことがあるようだ。
これまでにも同社は、ワシントンD.Cの東にあるチェサピーク湾(Chesapeake Bay)周辺での衛星データ解析を用いた農業収穫の改善やAI&IoTを用いたデータドリブン農業のプロジェクト「FarmBeats」。3,600種とも言われる種類、ジカ熱やエボラ、チクングニア熱など病原菌を媒介し、アウトブレークを引き起こすこれら生態を把握するために、エリアごとに蚊をドローンで採集し、解析を行うプロジェクト「Project Premonition」などテクノロジーを提供した環境改善のためのプロジェクト行ってきた実績を持っている。
Brad Smith氏は、近年同社のAI活用が実社会に貢献したいくつかの例を示している。フィヨルドに囲まれ大自然が色濃く残るノルウェーで再生エネルギー供給を行うAgder Energi社と提携。電気自動車のための電力システムの負担が増加しているノルウェーでは電力グリッドが拡大しており、同社クラウドやAIを活用した分析や予測が日夜稼働し、変動エネルギー需要への対応をこなしている。また、シンガポールでは、ビジネスパークや工業地帯のインフラ管理を行うJTCがクラウドを用いたモニタリングや分析を使い約40のビルディングのうちの最初の3棟の改善だけでエネルギーコストを15%削減している。これをグローバルレベルに換算すると世界全体のエネルギー消費の6%削減が可能になると同氏は指摘している。また、オーストラリアのYieldとは、センサー、アナリティクス、アプリを活用することで、農地単位の詳細なリアルタイム天候データを生成、水の消費を抑えた収穫の拡大に貢献。また牡蠣養殖業者との協力では、機械学習を用いて収穫期を年間4週間延長するなど、その分野は多岐にわたる。
大きく成果が表れ始めたAI活用だがBrad Smith氏は、私たちはAIが"game changer"(大きく変革をもたらすもの)になると信じており、個人や組織に利用されることで実世界が改善される民主化されたAIへのアプローチに企業として集中していると述べる。これらのプロジェクトを進展させ、AIの技術進化をプラットフォームに取り込むことで、より多くの機会が提供されるとしている。食料や水資源など世界レベルで見た場合の危機的状況の緩和、多様化したビジネス個別の成果の効率化や拡大は、食料環境や労働環境の改善にも繋がる。最後に同氏は、気候問題の多くが過去の産業革命の副産物でもあり、この副産物をテクノロジーの進化で解決すると同時に、新しい時代へと進んでいくためにAIの力は欠かせないと締めている。