コマツは12月13日、NVIDIAが開催したプライベートカンファレンス「GTC Japan 2017」において、建設現場においてGPUを活用したAIを導入することで、現場の安全と生産性の向上を高めることを目指した協業を行っていくことを明らかにした。
さまざまな分野でディープラーニングをベースとした人工知能(AI)の活用が進められ、変革をもたらす原動力となっている。「建設・鉱業」もそうした変革の恩恵を受ける次世代産業分野として期待されている。特に国内の建設業界は、高齢化に伴う熟練工の減少などにより、今後、労働者数は右肩下がりで減少し、2025年には、必要とされる想定労働者よりも130万人ほど不足するという予測もあり、それを補う労働力としてAIの活用が期待されているという。
すでにコマツは2013年にGNSSを用いて遠隔地から半自動制御を可能としたICT建機を、2015年には、建設生産プロセスのすべてを3次元データで作成、結び付けを行い、それらの情報をもとにさまざまな情報をICTで結び付ける「スマートコンストラクション」事業を開始しているが、今回の協業は、そうした取り組みを加速させるもの。コマツの執行役員でスマートコンストラクション推進本部長を務める四家千佳史氏は、「以前からコマツが提供してきたKOMTRAX(コムトラックス)は社内では"ものをつなげたもの"、という表現をしてきたが、スマートコンストラクションは、"ことをつなげるもの"、と表現している」と、何がどこにあるのか、といったのみならず、それがどの程度、土を掘削したのか、どういう品質に仕上げたのか、といった行ったことまで把握できることを目指したものであることを強調する。
具体的には、工事の前にパートナーでもあるSkyCatchのドローンで3次元地形を把握してきたほか、施工データも3次元で管理を行うことで、時間単位での施工シミュレーションを実現しており、進捗に併せた図面の引き直しなどの手間を削減するに至っているという。ただし、現状は、ドローンで撮影された地形データの容量が2~3GB程度あり、それをクラウドに送信し、3次元処理を施すと6~7時間ほどかかり、さらにそこから点群データとして不要な部分の除去などを行うと、15~20時間かかるとのことで、日々の見える化が困難な状態となっているほか、膨大な量の通信が生じることもネックとなっていたという。
そこで、今回の協業をもとに、現場にNVIDIA Jetsonを搭載したコンピュータ「Edge Box」を配置。ドローンのデータを通信で取得し、その場で3次元処理を実施することで、転送後20分程度で処理を終えることができるようになったほか、Edge Boxはネットワークゲートウェイとしての機能も有しているので、可視化された現場の変化などをネットワーク越しに現場で確認することにも役立てることができるという。この機能は、例えば、ダンプトラックは、土砂が積み込まれている間、その場に待機しているが、そうしたダンプトラックが前にまだ残っていれば、後ろのダンプトラックも待機することになる。単に位置情報のみのデータでは、その場所にいる、という事実はわかるが、それがどういう状態で居る、というところまではわからないため、これをカメラで学習データを比較判断し、積み込まれている状態なのが、ほかのダンプトラックが積み込みを終えるのを待っているのか、といったことを判断できるようになるという。
このほか、「監督Ai」と銘打ったソリューションは、どんな建機がどこで動いて、どういった作業を行っているのかをすべて可視化するもので、状況の変化を把握し、建機のオペレータに、都度、的確な指示を与えてやることを可能とする。
「建設は労働集約型の産業で、デジタル化が難しいと言われてきたが、画像認識技術の発展で、最先端なデジタル産業へと変貌を遂げようとしている。すでに建設機械にはカメラや通信装置も搭載されており、今後、それらのほか、さまざまなセンサなども活用していくことが期待される」(四家氏)とのことで、これまでスマートコンストラクションは主に日本での活動であったが、こうして培ったノウハウを海外にも積極的に展開していきたいとしている。