KDDIと小湊鐵道は12月12日に記者向けの説明会を開催し、2017年5月14日から5月31日まで千葉県の路線バス1台で実施した危険運転予防の実証実験について、結果を報告した。
同実証実験では、路線バスの運転席前方に取り付けたカメラの画像データや走行データなどを活用し、運転中の社内乗務員の表情や挙動を計測することで、表情変化やわき見運転などの「ヒヤリ・ハット」につながる可能性のある事象の時刻や位置を特定。これにより、小湊鐵道は安全管理体制の構築に必要な教育や訓練を効果的に行うことができるようになったという。
小湊鐵道 バス部 次長の小杉直氏は「近年、当社は鉄道事業と路線バスに加えて、都市間を結ぶ高速バスが事業の大きなウェイトを占めるようになった。事故を防止するために我々は『セーフティファースト宣言』を出し、乗務員の健康管理や指導・教育の強化に取り組んでいる。車両には運転時の速度・走行時間・走行距離などの情報をメモリーカードに記録するデジタル式の運行記録計『デジタルタコグラフ』を搭載しており、運行終了後に指導を行っているが、それだけでヒヤリ・ハットにつながる可能性のある情報収集は難しい。そこで、今回、デジタルタコグラフとカメラを使って、車内乗務員の挙動を計測し、表情変化や目線などを収集する実証実験を行うことにした」と、実証実験に取り組んだ背景を述べた。
KDDI ビジネスIoT企画部 部長の原田圭悟氏は「IoTに対してどこから手を付けていいか悩んでいるお客様が多く、アイデアをスピーディかつスモールスタートさせたいというニーズが多い。今回の実証では、最初に仕様を決めてすべて開発してしまうのではなく、お客さまと相談しながらアジャイルで開発していくスタイルで進めた。具体的には、まず車内に設置したカメラで5秒ごとに乗務員の様子を撮影。データをルータ経由で画像解析サーバに送る。顔の位置ずれや、下向き、表情などを解析し、異常か否かを判断し、異常があった場合にデジタルタコグラフを起動。画像に速度や位置、時刻を付加してレポーティングするという仕組みだ。表情からは驚きや怒りなどの感情を検知し、分析結果を管理画面で表示することができる」と、実験の概要を紹介した。
実証実験では、速度10km/h以上での顔の位置ずれ、下向き、表情変化の有無について計測。13日間で290件を検知した。
小杉氏は「得られた結果から、ヒヤリ・ハットにつながる可能性のある判断した部分については、映像教育として乗務員の指導に使っていく。プロの乗務員は無理な運転をしないため、従来ヒヤリ・ハット予備軍を見つけること自体が難しかったが、早期発見し指導を行うことができるようになった。今後はより精度を高めて、高速バスを含めて応用できるようにしていきたい」と、展望を述べた。