Hewlett Packard Enterprise(HPE)は11月28日、スペイン・マドリードで開催したイベント「HPE Discover Madrid 2017」で、ハイブリッドIT管理ソリューション「OneSphere」を発表した。

同ソリューションは、マルチクラウド、オンプレミスのリソースを1つとして扱い使用を可視化し、運用、開発者、ビジネスのコラボレーションを促進するという。SaaSとして提供するため、容易に導入できる点も特徴の1つだ。

OneSphereはHPEが「Project New Stack」として3年前から進めてきたプロジェクト。Project New Stackは初夏の「HPE Discover Las Vegas 2017」で初めて公にした。

HPEは「ハイブリッドITをシンプルにする」「インテリジェントエッジ」「デジタルトランスフォーメーション」を実現するサービスと機能の提供の3つにフォーカスしているが、OneSphereは「ハイブリッドITをシンプルにする」を具現化するものとなる。この分野ではこれまで、コンポーザブルインフラ「HPE Synergy」や、ハイパーコンバージド・ソリューションSimplivityの買収などを進めてきた。HPE Synergyはすでに1000社以上の顧客があり、Simplivityは2000社以上の顧客があるという。

OneSphereの主要機能とは?

28日、プレスの前で「HPE OneSphere」を説明したHPEのソフトウェア定義・クラウド事業部でシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのRic Lewis氏は、「顧客は真のハイブリッドIT環境を構築・運用するにあたって支援を求めている」と顧客の課題を説明した。

  • Hewlett Packard Enterpriseソフトウェア定義・クラウド事業部 シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー Ric Lewis氏

OneSphereはそれに応えるものとなり、複数のパブリッククラウド、オンプレミスのプライベートクラウド、ソフトウェア定義インフラインフラをパブリッククラウドのように管理できる。

もたらすメリットは、IT運用(Ops)を簡単にするだけではない。「ソフトウェア定義機能を利用してプライベートクラウドを迅速に構築、実装できるため、開発者とビジネス担当もメリットを享受できる」とLewis氏。プライベートクラウドの実装をDIYでやっている場合、OpenStack、Kubernetesなどのオープンソースの技術を使うことが多いが、「実装に時間がかかり、実装後のメンテナンスも難しい」という。

そこで、OneSphereを利用することで。運用側は開発者が必要とするパブリッククラウドやサービスをすぐに準備でき、開発者はサービスカタログとして必要なサービスとツールが組み込まれているマルチテナント環境を利用して、アプリケーションの開発・実装を迅速にできるというわけだ。既存の仮想マシンをプライベートクラウドオプションに統合したり、オンデマンドでプロビジョニングを行ったりすることもできる。

OneSphereのもう1つの機能は、自社の資産で動くワークロードの使用とコストを可視化できる点だ。パブリッククラウド、プライベートクラウドで何が動いており、使用量がどれぐらいかを管理できる。「顧客から『パブリッククラウドの請求額に驚いた』という声を聞く。OneSphereはコストに関して透明性のある情報を提供し、顧客はコストの面でも効率よくリソースを利用できる」とLewis氏はいう。

  • 「OneSphere」の画面。各リソースの使用量とコストを管理できる

OneSphereはSaaS形式で提供するため、利用も簡単だ。ポータルにログインするだけでITリソースのプールを始め、機能にアクセスでき、使用に応じて料金を払えば良い。HPEは自社ハードウェアでHPE Flexible Capacityとして従量課金を導入しており、OneSphereはこれを補完できる。

  • サービスカタログを利用して迅速に実装できる

OneSphereこそ新のマルチクラウド管理ツール

マルチクラウド管理ツール自体は新しいものではないが、「現在、市場で提供されているツールは、パブリッククラウドのマルチクラウド管理しかできなかったり、オンプレミスとオフプレミスの管理は別だったり、オンプレ環境の管理ができなかったりなどの制限がある」と、Lewis氏は指摘する。

「HPEは最初にハイブリッドITが現実になると見通したベンダーであり、市場はその方向にある。ハイブリッド環境では複雑性が増しており、顧客はスピードを得るために容易に効率よく管理したいと思っている。HPE OneSphereはそれを実現するものだ」と、OneSphereの差別化のポイントを説明した。

OneSphereの土台には、HPEが今年9月に買収発表したクラウドコンサルティングベンダーのCloud Technology Partners(CTP)の技術も活用されている。CTPはパブリッククラウドとプライベートクラウドをまたいでクラウドアプリケーションとインフラのマイグレーション、開発、管理などを得意とするIoTエッジについては、現在は管理できないが「将来的にその方向にある」と、今後取り組む予定であることを示した。

OneSphereは2018年1月より、米国、英国、アイルランドで提供を開始し、その後、他の市場に拡大する。価格などの情報は非公開。スタート時、クラウドはAmazon Web Services(AWS)をサポート、これにMicrosoft Azureのサポートが続き、Google Cloud Platformも対象とする計画だ。カスタマイズなど個別の要求に対しては、HPEの技術サポートPointNextが支援する。