東京大学 生産技術研究所(東大生研)は12月11日、「新しい意味や価値を生み出す仕組み」を考えるための場として、「価値創造デザイン推進基盤」を設立したことを発表した。
従来、ものづくりの現場では「設計」と「デザイン」が工程として分離しており、技術者が設計を行った後、その外形を整えるようなアプローチが行われてきた。しかし現在、スマートフォン普及の立て役者となったiPhoneをはじめ、構想や企画において優れた製品が市場を構成している状況において、従来の技術先行型アプローチだけでは、市場を創出するような製品を生み出すことが難しくなっている。そこで、「新しい意味や価値を生み出す仕組み」を考えるべく、「価値創造デザイン」への取り組みを開始したという。
「価値創造デザイン」という語には、技術(シーズ)が駆動させる「テクノロジーの持つ意味の発見」と、市場ニーズが牽引する「ユーザー目線の価値創造」という2つの要素がこめられており、このふたつの命題を、「デザインとエンジニアリングの融合」によって実現するべく活動を続けてきた。
今回設立された「価値創造デザイン推進基盤」では、以下の3つの課題に取り組んでいく。
- 価値創造デザインプロセスの開発
- デザインエンジニアリング人材の育成
- 国内外に開かれた産官学民協働連携拠点の形成
1を行う「研究推進部門」は、すでに3Dプリンティングを活用したプロジェクトなどを展開している、インダストリアルデザイナー・同大教授の山中俊治氏が率いる。2に関しては、同基盤の副基盤長である新野俊樹教授がリーダーシップをとる。
「デザインエンジニアリング人材」は、「デザインとエンジニアリングの融合」を実現するような、生産技術の基礎を理解し、プロジェクトマネージャー的なふるまいの行える人を指すという。生研に置かれる基盤ということで、まずは大学院生への教育を中心に据えるが、来年度は学部生に対しても試験的に講義を行う想定だ。会見に出席した新野教授は、「(工学系の各分野だけでなく)人文社会系とのコラボレーションもあるべき」として、生研内のみならず学内の連携も推し進めたいという意向を示した。
なお、同基盤設立に際して、英・ロイヤルカレッジオブアート(RCA)よりマイルス・ペニントン教授を、米・MITメディアラボからは「スプツニ子!」名義でアート活動を行っている尾崎マリサ特任准教授を迎えた。RCAは東京大学・生産技術研究所と共同で価値創造デザインのラボ「RCA-IIS Tokyo Design Lab」を運営しており、ペニントン教授は双方の連携関係をさらに深める役割も担う。両名は基盤内において「国際連携部門」に所属し、グローバルな産官学民協働連携拠点としての同基盤の形成を行っていくということだ。