芝浦工業大学(芝工大)は、安全ながら有機溶媒に難溶なフッ化カリウムに対して、安価な固体酸を有機溶媒中に添加することで、フッ化水素にほぼ100%の効率で定量的に変換する手法を開発したと発表した。

同成果は、芝工大応用化学科の田嶋稔樹 准教授によるもの。

従来、有機フッ素化合物は、天然の蛍石に濃硫酸を加えフッ化水素を生成するか、そこから電気分解でフッ素ガスにして貯蔵し合成していた。しかし、フッ化水素やフッ素ガスは毒性や腐食性、さらには爆発性もあり、高度なノウハウや特別な設備が必要となりコストがかかっていた。

そこで、フッ化水素を安全なフッ化カリウムにして、そこから有機フッ素化合物を合成する手法が模索されていたが、フッ化カリウムは有機溶媒へ非常に溶けにくく、上手くいかなかった。

今回の研究では、安価な固体酸(溶液中の陽イオンを交換する樹脂)を活用することで、カチオン(陽イオン)交換反応に基づきフッ化カリウムを有機溶媒中でフッ化水素に戻せる生成技術を確立した。

有機溶媒中へ、ビーズ状に加工された固体酸を加えると、固体酸が持つスルホン酸がフッ化カリウムと反応し、フッ化水素が発生する。この手法により、従来の1万倍以上、フッ化カリウムが溶けやすくなるという。なお、固体酸は簡単に濾過でき、濃硫酸を加えることで繰り返し利用できる。

  • 今回開発された生成技術 (出所:芝浦工業大学Webサイト)

加えて、有機溶媒中のフッ化水素は溶媒和により安定した状態を保て、特別な設備がなくても安全に取り扱う事ができる。さらに、フッ化水素をアミン-nHF錯体へ容易に変換でき、有機化合物のフッ素化に利用できる安全なフッ素化剤を合成が可能になったとしている。 今回の成果を受けて研究グループは、今後、フローリアクターによる量産体制の確立を目指し、協力先企業を模索し産学連携を進めてきたいとしている。また、アミン-nHF錯体によって未知の有機フッ素化合物を合成、比較評価し、有用な有機フッ素化合物を生み出したいとコメントしている。