九州大学(九大)は12月6日、第3の生物ドメインである、アーキア(古細菌)に属し、100℃の極限環境で生息するう超好熱細菌「T.kodakarensis」が有する2種類のDNA複製の際に二本鎖のDNAを開裂したり、DNA修復に活用されるタンパク質「Cdc45/RecJファミリ」の機能を示すことに成功したと発表した。
同成果は、九州大学大学院農学研究院の石野良純 教授、京都大学工学研究科の跡見晴幸 教授らの研究グループによるもの。詳細は英国の学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
これまでの研究から、同研究グループは、2つのCdc45/RecJファミリのうち、「GAN」と名付けたタンパク質について、DNAの複製反応を進行させる複製装置を構成する因子であると報告していたが、残りの「HAN」と名付けたタンパク質の役割はよく分かっていなかった。そこで今回、詳細な研究を実施。その結果、複製反応を進行させるCdc45やGANとは異なり、何かの原因により複製反応が停止した際に、素早く修復して複製反応を再開するために働いていることを実験的に示すことに成功したとする。
この結果について、研究グループでは、地球上の生物が有するCdc45/RecJファミリタンパク質の機能の多様性が示されたと説明するほか、複製反応時のトラブル解消の方法に新たな知見を提供するものとしている。また、この修復機構が、生物共通に獲得されたものなのか、太古の地球における超高温環境で自らの遺伝情報を守るために、超好熱性アーキアだけが獲得したものなのか、といった新たな謎が示されたとしており、今後、さらなる研究を進めることで、極限環境での独自の生命現象の理解につながることが期待できるようになるとコメントしている。