京都大学(京大)は、青色光と二酸化炭素(CO2)に応答した気孔開閉運動を制御する分子機構の一端を明らかにしたと発表した。

同成果は、杉山直幸 薬学研究科 准教授、日本学術振興会の樋山麻美 特別研究員(九州大学)、九州大学の島崎研一郎 教授(現 名誉教授)、山口大学の武宮淳史 准教授、名古屋大学の多田安臣 教授、岡山大学の宗正晋太郎 助教、同 村田芳行 教授らの研究グループによるもの。詳細は、国際科学誌「Nature Communications」(オンライン版)に掲載された。

  • 気孔運動

    タンパク質リン酸化による細胞内の情報伝達 (出所:京都大学Webサイト)

高等植物の葉の表皮には、一対の「孔辺細胞」と呼ばれる高度に分化した細胞からなる、気孔という小孔が存在する。植物は気孔を開くことで、光合成に必要な二酸化炭素を吸収し、同時に蒸散により水を放出することで、土壌の栄養分を根から吸収するための駆動力を得ている。

気孔は光に応答して開き、なかでも特に400nm~500nm付近の青色光が気孔の開口に重要で、植物の光合成を増大させることが分かっていた。また、高濃度CO2は気孔閉鎖を、低濃度CO2は開口を誘導することが判明している。気孔開度は植物の生育に大きな影響を与えるため、大気中のCO2濃度の変動が農作物に与える影響を理解し、その対策を考えるためにも青色光とCO2による気孔開閉運動の情報統合機構の解明が求められていた。

研究グループは今回、青色光刺激により植物の細胞内で起こるタンパク質リン酸化の変化を調査。その結果、青色光とCO2による気孔開閉運動の制御シグナルに関わる新奇タンパク質リン酸化酵素の同定に成功。同酵素をCBC(CONVERGENCE OF BLUE LIGHT and CO2)と命名した。

研究グループは、「今回発見したタンパク質リン酸化酵素CBCは、青色光と低濃度CO2による気孔開口の増大を引き起こすもの。同成果は、変動する大気中の二酸化炭素濃度が農作物の生育に与える影響の理解に貢献するものであり、今後、二酸化炭素の吸収効率を高めた農作物の開発技術への応用が期待される」と説明している。