産業技術総合研究所(産総研)は12月4日、石垣島を含む先島諸島で、砂質津波堆積物を発見したと発表した。
同成果は、静岡大学の安藤雅孝 客員教授、北村晃寿 教授、生田領野 准教授、琉球大学の中村衛 教授、東京大学の横山祐典 教授、宮入陽介 特任研究員、産総研の宍倉正展 研究グループ長らによるもの。詳細は、国際誌「Tectonophysics」にてオンライン公開された。
1771年に起きた八重山地震は、最大遡上高30mの巨大津波を引き起こした琉球海溝沿い最大の地震として知られている。この地震に伴う八重山津波は、石垣島を中心に先島諸島全域にわたり、1万2000人の犠牲者と甚大なる被害を与えた。そのメカニズムの研究は従来、主に津波石を用いて行われてきたが、その分布から津波の遡上限界を決定できなかった。一方、砂質津波堆積物の分布からは遡上範囲を決定できるが、先島諸島では、津波堆積物の分布を把握できる場所は未発見であったという。
研究グループは今回、調査用溝(トレンチ)から、津波堆積物の分布を正確に決定できる場所を発見し、過去2000年間に約600年間隔で、八重山津波とほぼ同規模の津波が、4回起きていたことを明らかにした。さらに、従来、八重山地震は「津波地震」(津波の大きさに比べ地震動が小さい、断層面上でゆっくりとしたすべりが生じた地震)と考えられていたが、トレンチ内から地割れがいくつも発見されたことから、激しい地震動を伴う、「巨大地震」であったことが推定されたと説明している。
なお、研究グループは今回の成果について、先島諸島の防災対策に有益な科学的知見となるものであるとコメントしている。