IIJは12月5日、IoTに関する事業説明会を開催した。同社では、2016年7月、IIJ IoTサービスを発表しているが、モバイルサービスは200万回線を突破しており、2/3はIoT用途だという。活用ジャンルとしては、カメラ(監視・マーケティング)がもっとも多く、オフィス関連、エネルギー関連が上位に来る。

  • 法人モバイルの利用用途

    法人モバイルの利用用途

  • IoT/M2Mの活用ジャンル

    IoT/M2Mの活用ジャンル

IIJ クラウド本部 副本部長 染谷直氏

IIJ クラウド本部 副本部長 染谷直氏

IIJ クラウド本部 副本部長 染谷直氏は、「モバイルサービスは2015年を境に、IoT/M2MがPC/スマホを上回っており、利用の変化が起きている。MVNOではコンシューマの下り回線がトラフィックを圧迫しているが、上りはスカスカの状態だ。カメラ利用はその上りの回線を利用したものだ。IoT領域では、ネットワークを中心にデータ管理、クラウドでのデータ解析、デバイス管理のほか、セキュリティにも活用領域を広げている。IIJはインターネットにおいて接続アプリ、ルータ開発に注力し、業界に貢献してきたが、IoTに対しても自ら経験し、実践していく」と決意を述べた。

IIJ クラウド本部 クラウドサービス2部 ビッグデータ技術課長 岡田晋介氏

IIJ クラウド本部 クラウドサービス2部 ビッグデータ技術課長 岡田晋介氏

また、IIJ クラウド本部 クラウドサービス2部 ビッグデータ技術課長 岡田晋介氏もIoTサービスについて、「自らの経験および、エンドユーザのニーズを取り込み、進化させている。IIJでは、IoTネットワークのすべての提供していく方針だ。それに加え、デバイスの管理、SIMのコントロール、データの管理・可視化を提供するべく取り組んできた。IoTではさまざまな技術が必要とされるが、われわれは、『IoTをシンプルに』をめざし、サービスの提供を行っていく」と語った。

岡田氏は、現在のIoTの課題として、PoC段階が多く、実践導入されている案件が少ない点を挙げ「案件数は昨年比で倍増しており、数百件レベルになっているが、PoC案件が多い。大きな技術的課題はクリアになってきたが、問題は具体的な利活用シーンで、『これは』というものがでてきていない」と述べた。

そして「最近はIT部門ではなく、事業を新たに作りだしていく部門からの問い合わせが増えている。それに対して、今後、いくつかの答えを出していきたい」と語り、同社が取り組む農業IoTの事例を紹介した。

この事例は、農林水産省の公募事業である平成28年度「革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト)」において、「低コストで省力的な水管理を可能とする水田センサー等の開発」の研究課題に応募し、採択され、取り組んでいるもの。

具体的には、ToTセンサーで水田の水位および水温を監視し、自動給水弁により水位を遠隔で管理できる「ICT水管理システム」を開発し、静岡県の経営体での実証実験で水管理にかかるコスト効果を測定する。

  • LoRaWANによる水田管理システム全体像

    LoRaWANによる水田管理システム全体像

水位・水温を測定する電池駆動の水田センサーを水田に設置し、ネットワーク経由(LoRaWAN)で水位・水温情報を収集。自動給水弁を使って、遠隔からネットワーク経由で給水弁の開閉を制御する。

  • 開発する水田センサと自動給水弁

    開発する水田センサと自動給水弁

IIJ ネットワーク本部 IoT基盤開発部長 齋藤透氏

IIJ ネットワーク本部 IoT基盤開発部長 齋藤透氏

水田センサーからのデータ収集、自動給水弁の制御には、IIJが提供する「IIJ IoTサービス」と、通信機器や基地局を遠隔から集中管理するIIJのマネージメントサービス「SACM」を利用する。

IIJ ネットワーク本部 IoT基盤開発部長 齋藤透氏よれば、この案件では、センサーを1万円程度、自動給水弁3万円程度の量産価格に抑えるように開発していくことが課題だという。

現在、センサー300個、自動給水弁100台を使って、静岡県内で実証実験を行っており、今後、改善を行いながら、2020年まで実験を行っていく予定だ。

同氏によると、事業化にはセンサーの利用が10万台程度必要で、それには県レベルで半分程度の水田にセンサーを取り付ける必要があるという。