米航空宇宙局(NASA)は、1977年に打ち上げた宇宙探査機「ボイジャー1号」のバックアップ用スラスターを37年ぶりに点火し、動作させることに成功したと発表した。
スラスターは、数ミリ秒間と短時間動作する小型の噴射エンジンで、探査機を回転させて通信用アンテナを地球方向に向けるといった用途で使われる。
これまで使用してきた姿勢制御用スラスターが劣化してきたため、バックアップ用の4つのスラスターを作動させた。これらのスラスターは軌道補正用マニューバー(TCM:trajectory correction maneuver)と呼ばれるタイプのもので、木星、土星などの惑星探査時に使用され、1980年を最後にその後は一度も動かしたことがなかった。
NASAジェット推進研究所(JPL)によると今回、TCMスラスターが正常に動作することが確認できたことで、ボイジャー1号の運用寿命を2~3年程度延ばすことができるという。
「ボイジャーのフライトチームは、数十年前のデータを掘り起こし、旧式のアセンブリ言語でデータ化されたソフトウェアを検討することで、スラスターの動作試験を安全に行えるようにした」とJPLのチーフエンジニアChris Jones氏はコメントしている。
TCMスラスターの動作試験は2017年11月28日に行われ、10ミリ秒のパルス噴射によって探査機の姿勢を調整できるかどうかが試された。ボイジャー1号は現在、地球から209億kmほど離れた恒星間宇宙空間を飛行中であるため、テスト結果が確認できたのは通信のタイムラグから19時間35分後になったという。
これまで使用してきた姿勢制御用スラスターからTCMスラスターへの切り替えは、来年1月に計画されている。ただし、TCMスラスターを動かすには1台ごとにヒーターを動作させる必要があり、その分エネルギーを多く必要とする。ボイジャーの電源は、プルトニウム238(半減期約88年)の崩壊熱を電気エネルギーに変換する原子力電池であるが、使用できる電力は年月ともに減っていくため、ヒーターの動作に必要な電力を確保できなくなる頃にもう一度、これまでの姿勢制御用スラスターに再度切り替えることになるという。
NASAでは、ボイジャー2号についても同様のスラスターのバックアップ試験を行う予定であるという。
1977年に打ち上げられたボイジャー1号・2号は運用40年目となった今も現役で、太陽系外縁部および太陽系外での荷電粒子、磁場、低周波電波、太陽風プラズマなどの観測データを地球に向けて送信し続けている。