シトリックス・システムズ・ジャパンは11月30日、同社の新しいコンセプトである「Secure Digital Workspace」、および今後の日本における事業戦略を説明した。
「Secure Digital Workspace」は、ユーザーのロケーションに関係なく、クラウドおよびオンプレミスにあるアプリ、デバイス、データに対して、1つのインタフェースを通じてセキュアにアクセスできる一元管理されたプラットフォームで、シングルサインオンでそれを実現するというもの。
米Citrix Systems プロダクトマーケティング バイスプレジデント カルヴィン シュー氏は、このようなコンセプトが必要な背景を次のように説明した。
「10年ほど前のIT環境は、アプリやデバイスの数も限られており、管理者はITをコンロールできていたが、その後、アプリの数が爆発的に増え、それがさまざまなソースから提供され、SaaS形態も発展している。また、一人が複数のデバイスを使い、無制限のコンビネーションが生まれている。これに対して、IT管理の人はさまざまな問題に対して、それぞれ個別のソリューソンを見つけようとしている。これにより管理の複雑性が増し、リスクが高まっている。そのため、一元管理されたプラットフォームが必要だ。ソリューションが1つの環境にまとまっていれば、ユーザーも管理者もそこだけ見ればいい。それが現在のワークスペースだ。アプリやデバイス、データはロケーションに関係なく、ユーザーとともになければならない。これはユーザーエクスペリエンスが集約されたものだ」
米Citrix Systems アジアパシフィック ジャパン セールス&サービス担当バイスプレジデント スタニミラ コレヴァ氏も「現在はIoTの重要性が拡大し、新しい課題も生まれているが、同時に商機も生まれている。農業やヘルスケアなどで、今後大きな改革があり、情報も多様化している。AIも成長し、仕事の環境も変わっていくだろう。モビリティも重要なトレンドで、働き方改革においても、重要なポジションを占めており、企業の中でどう活用していくのかが鍵になっている。クラウドも重要性が高まりつつあり、パブリッククラウドを通じて、運用管理、コンピュータ、ストレージを数秒でサービス提供できる環境になっている。これを効率性、生産性の向上、コストダウンにどうつなげていくのかも課題だ。同時にコネクビティティが普及しつつあり、サイバーセキュリティの優先度も高くなっている。これらはすべてがつながっており、シトリックスの戦略もそれに合わせて発展させなければならない」と説明した。
「Secure Digital Workspace」では、「デジタル境界」という概念でセキュリティ機能を取り入れているという。
カルヴィン シュー氏は、「デジタル境界」の概念を次のように解説した。
「以前のセキュリティは、高い壁で囲むことで守っていたが、現在はモバイルの普及によってどこで仕事をするかではなく、境界線はユーザーのまわりにできており、どのデータを使うのか、どのデバイスを使うのかによって、境界線を変えていかなければならない」 (カルヴィン シュー氏)
シトリックスでは、この機能を人間の中枢神経ようなもので実現するという。中枢神経には脳と脊髄があり、脳ですべての判断を一元化し、背骨ですべての必要な情報を集め、脳に提供するという。
脳の中には、どういったポリシーを適用するかという判断を行うロジックの部分に相当するアナリティクスサービスがあり、AIによって決定する。情報は、ネットワーク情報を含め、シトリックスが提供する各ソリューションによって集めてくるという。
そのほか、 「Secure Digital Workspace」では、ワークフローの機能も統合されているほか、ユーザーの行動をパターン化し、ワークフローやアプリをレコメンドする機能も提供されるという。
今後、日本では働き方改革を軸に提供
説明会では、今年の2月にシトリックス・システムズ・ジャパン 代表取締役社長に就任した青葉雅和氏によって国内戦略が説明された。同氏は今後、働き改革の推進に注力するとした。
同氏は、「シトリックスは日本で仮想化を20年やっており、最近は、『働き方改革はシトリックス』といわれるまでになってきた。今後は、この領域を進めていきたい。お客様の中には、働き方改革をどこから手を付けていいのかわからないとおっしゃる方もおり、これに対して、シトリックスの知見をワークショップにより伝えていく。また、パートナー様との協業も強化していきたい」と述べた。
パートナー施策の具体例が、先日発表された富士通によるクラウドによる 仮想デスクトップサービス(VCC:Virtual Client on Cloud) の提供だ。富士通 プラットフォームソフトウェア事業本部 ISVセンター 部長 高野徳巳氏によれば、最近は、PoCとして、大企業が数十単位VDIライセンスを試験導入するケースが増えており、富士通ではVCCでこのニーズに対応するほか、Office 365のSkype for Bisunessへの対応、活性化するWindows 10移行商談も行っていくという。
富士通ではVCCを提供するに際して、1IDにつき月額3500円(税別)という低価格を実現するため、運用管理/監視基盤の共有化、Citrix管理サーバの統合、設計、構築、運用の共通化、監視基盤のLinux化などを行ったという。