ルネサス エレクトロニクスは、11月29日から12月2日にかけて東京ビッグサイトにて開催されている「SCF(システムコントロールフェア)2017/計測展2017 TOKYO」において、産業ネットワーク用通信プロセッサ「RZ/N1」対応ソリューションキットの内容を拡充し、それを用いて複数の産業用Ethernetプロトコルを接続させたデモを実施している。

「RZ/Nシリーズ」は、ゲートウェイやスイッチといった用途のハイエンド向け「RZ/N1Dグループ」、ミッドレンジ向け「RZ/N1Sグループ」、コントローラなどのローエンド向け「RZ/N1Lグループ」の3種類のラインアップが用意されている。

  • RZ/N1のラインアップは3製品

    RZ/N1にはスレーブ向け「RZ/N1L」、マスタ/スレーブ向け「RZ/N1S」、マスタ向け「RZ/N1D」の3種類が用意されている (資料提供:ルネサス エレクトロニクス)

今回のソリューションキット拡充の最大のポイントは、通信の堅牢性を確保するための冗長性への対応と、PLCアプリケーションをプログラミングするための、IEC 61131-3準拠の統合開発環境およびランタイムソフトウェアである「CODESYS」に対応した点。EtherCAT、EtherNet/IP、Sercos、PROFINETといった産業Ethernetマスタースタックをサポートしているため、ソフトウェアを書き換えるだけで、各プロトコルに対応することができるようになり、PLCメーカーはPLCのハードウェア仕様はそのままに出荷先のニーズに応じて、必要なプロトコルをソフトウェア変更だけで対応することが可能となる。

  • ソリューションキットの内容拡充概要

    ソリューションキットの内容拡充により、できるようになったこと (資料提供:ルネサス エレクトロニクス)

同社インダストリアルソリューション事業本部 IAソリューション事業部長の傳田明氏は、「"つながる"をキーワードに、複数の産業用EthernetプロトコルにRZ/N1ファミリ3種類のチップが対応し、かつ冗長性にも対応したことで、同ファミリは、工場内アプリケーションで活用されることを意識したハードウェアソリューションとなった」と、今回のキット内容の拡充の意義を語る。

  • RZ/N1は、さまざまな産業Ethernetに対応
  • SCF2017におけるデモのイメージ
  • SCF2017におけるルネサスブースのデモの概要 (資料提供:ルネサス エレクトロニクス)

これにより、複数の産業用Ethernetプロトコルが混在する環境であっても、同一ハードウェアで活用することが可能となり、実際のブースデモでもPROFINET、EtherCAT、EtherNet/IP、CC-Link IE フィールドネットワーク Basicの4つの機器をリングバスでロジックコントローラを含む形で接続。センサや物理スイッチで、ネットワークの接続が擬似的に切断された状態にしても、ネットワークが安全に停止できる様子を見ることができた。

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  • ブースで紹介されていたデモの概要

ちなみに、冗長化が今回の拡充のポイントの1つながら、デモでその様子を見せていない理由について聞いたところ、例え一方のネットワークが切断されても、RZ/N1が自動的に切断を瞬時に判断し、別系統に切り替え、ネットワークの接続性を維持してしまうため、見せ方を工夫しないと、何も起きていないようにしか見えないため、とのことであった。

  • SCF2017におけるルネサスブースのデモ風景
  • RZ/N1D搭載のPLC
  • アルファプロジェクトによる参考出展のRZ/N1D搭載ボード
  • SCF2017におけるルネサスブースのデモの様子。分かりづらいが、全体画像の左端に、物理スイッチがこっそり見える。これをオフにすると、瞬時にすべてのシステムが安全に停止するというデモとなっている。このほか、緊急停止スイッチや、近接センサによる停止も体験できる

OPC UAやTSNといった次世代産業ネットワークにも注力

ちなみに、同社ブースでは、このほかにも機能安全やセキュリティのデモ、OPC UA(OPC Unified Architecture)、TSN(Time Sensitive Networking)への取り組みなども紹介している。中でもOPC UAは特定のプラットフォームに依存しないフレームワークとして、実現に向けた動きが着実に進展してきているとのことで、今回のブースデモでは、パートナーと協力する形で、Linuxであっても、ROTSであっても、同社のすでに対応が可能であることを示したものとなっている。これにより、例えばマイコン(RTOS)クラスのOPC UAの活用により、中間層を設置せずに、機器の直接制御が可能になるほか、上位プロトコルが1つになるので、プロトコル開発の手間をなくし、システム全体の構築も容易化できるようになるとしている。

このように今後、IIoTの普及が進めば、幅広く活用されることが期待されるのがOPC UAであるため、同社でも積極的にハートウェアメーカーとしての立場から、OPC Foundationへの働きかけを行い、その存在感を高めていきたいとしていた。

  • OPC UA対応Linuxのデモ

    OPC UAに対応したLinuxソリューションのデモの様子

  • OPC UA対応RTOSのデモ

    OPC UA対応RTOS(μITRON)ソリューションのデモの様子