TIのDave Smith氏

Photo01:説明を行ったDave Smith氏(MSP430 Product Marketing Manager)

米Texas Instruments(TI)は11月28日(米国時間)、同社のMSP432シリーズMCUの新製品として、EthernetのMACとPHYを統合した「MSP432E4」シリーズを発表した。これに先立ち日本時間の11月22日、日本TIにて説明会が行われたので簡単にレポートしたい(Photo01)。

MSP432E4シリーズは、コネクテッドデバイスのいわばゲートウェイになることを目指した製品である。目的としては、コネクテッドデバイスがどんどん増えてくる中で、それらを個別にクラウドなりフォグなりにつなぐのではなく、当然ゲートウェイが必要になってくるだろう、という読みに基づいてのことだとする(Photo02)。具体的には、今後はインテリジェントゲートウェイが増えてくるだろうという話で、ここを狙う製品となる(Photo03)。

  • Gartnerのコネクテッドデバイスのイメージ

    Photo02:750億個はGartnerの推定である。とは言え、現状でも84億個、という数字はなかなかインパクトがある

  • 750億個のコネクテッドデバイスを束ねるインテリジェントゲートウェイのイメージ

    Photo03:もっともインテリジェントゲートウェイが単にプロトコル変換だけでいいのか、それともいわゆるエッジコンピューティング的な能力を求められるのか、もし求められるとそれはどの程度か、という話は未だに明確な指針は存在しない

このために同社が用意するのは、もちろんEthernetを内蔵するのは当然なのだが、すでに存在するCortex-M3ベースのCCxxxxシリーズのSimpleLinkと共通のソフトウェアを利用できる様にすることだとする(Photo04)。

  • SimpleLinkマイコン製品プラットフォームのイメージ

    Photo04:ただこうなるとCCxxxxとMSP432xxの区別がわかり難い気はする。一応SimpleLinkというブランドで統一されているとは言え、どちらかに統一したほうが良い様な気がしないではない

そのMSP432E4の特徴がこちら(Photo05)である。MSP432E4自身はワイヤレスは搭載しないので、これが必要であれば別途SimpleLinkシリーズのどれかと組み合わせることになるが、逆に有線でのコネクティビティを異様に強化したのが特徴である。Photo06が内部構成であるが、機能の多い上位モデルのMSP432E411Yの場合、以下のようなかなり重厚なI/Fを搭載している。

  • 10/100BASE-T MAC&PHY w/IEEE 1588 PTP H/W Support
  • USB 2.0 Host/Device/OTG w/ULPI I/F
  • UART×8
  • QSSI(Quad Synchronous Serial Interface)×4
  • I2C×10
  • CAN 2.0A/2.0B×2
  • 1-Wire Module×1
  • 12bit/2Msps SAR ADC×2
  • Analog Comparator×3
  • Digital Comparator×15
  • 8/16/32bit EPI(External Peripheral Interface)
  • GPIO×22
  • MSP432マイコンの概要

    Photo05:ちなみにSmith氏は「Ethernetはスタンダードな802.3ベースでPTPなどはサポートしない」としていたが、データシートを見るとIEEE 1588 PTPのハードウェアサポートが入っていた

  • .MSP432E4の概要

    Photo06:下位モデルにあたるMSP432E401Yの方は、ADCが20ch(411Yは24ch)、Serial I/Oが19本(411Yは22本)、LCD I/Fなし(411Yは搭載)など微妙な差がある

プロセッサコアそのものは120MHzのCortex-M4Fであるが、こちらも1MBのFlash(4Bank構成)と256KBのSRAM(120MHz駆動時の帯域は2GB/sec)、6KBのEEPROMを搭載、さらにAES128/192/256やDES、SHA/DM5、CRCチェックなどに対応し、アンチタンパ性を持ったセキュリティユニットを搭載している。またSimpleLink SDKに対応した内部ROMも実装されるという、かなり重装備の構成となっている。

これをサポートするSDKも充実しており、RTOSからネットワークスタックまで一通り提供される(Photo07)。ちなみにSDKを見る限り、RTOSとしてはTI-RTOSが提供される模様だ。

  • SimpleLink SDKのイメージ

    Photo07:mbed TLSについては、別にmbed Cloudに限った話ではなく、TLSを利用して通信したい場合にこれを利用できるという話であった

具体的なMSP432E4の利用例としてTIが示したのはビル管理システム(Photo08)や工場内のIntelligent Gateway(Photo09)である。こうした使い方を前提にしているためか、MSP432E4は動作温度範囲が通常の-40℃~85℃ではなく、-40℃~105℃になっているのもちょっと特徴的だ。

  • ビル向けインテリジェントゲートウェイへの適用イメージ

    Photo08:このケースでは、Host MCUとかWireless MCUとはそれこそUARTやI2Cなどで接続することを考慮しているものと思われる

  • 工場内のインテリジェントゲートウェイへの適用イメージ

    Photo09:ただ工場向けだとEtherCATなどのIndustrial Ethernetへの対応も求められそうな気がするのだが、そちらはまだ未サポートという話だった

開発環境としてはSDKが無償提供されるほか、LaunchPadが19.99ドルで提供されるという話であった(Photo10,11)。

  • 開発キットの概要

    Photo10:機能が多い分、1000個ロットとは言え1個9ドル以上というのは32bit MCUとしてはかなり高価な部類に入るように思う

  • MSP432E401Y LaunchPad Development Kit

    Photo11:会場でデモされたMSP432E401Y LaunchPad Development Kit。Booster Packを2つ搭載できる構成で、異様に長い

ちなみにそのMSP432E4だが、パッケージは212BallのNFBGAで提供され、MSP432E401Yは9.03ドル(1000個ロット)、MSP432E411Yは11.02ドル(1000個ロット)ですでにサンプルおよび量産出荷を開始している。