今年でヤマハは創業130年を迎え、ネットワーク機器参入のきっかけになったFAXモデムをリリースして30年が経つ。同社は現在、全国縦断イベント「ヤマハ ネットワーク製品 アップデートセミナー2017」を開催中で、11月22日には東京で開催された。今回のレポートでは、そのハイライトを紹介する。

  • ヤマハ ネットワーク製品 アップデートセミナー2017【東京】の模様

2強と言われるルーター市場。ヤマハの次の戦略とは

国内ルーターシェアは完全に2強時代となり、ハイエンドに強いシスコとミドルとSOHOに強いヤマハというシェア構成が長期間続いている。そして、ヤマハが次の一手としてここ数年強化してきたのはスイッチである。スイッチの分野ではL2シンプル、L2スマート、L2インテリスイッチの分野でLANマップを搭載し、「外部ネットワークの見える化」から「LANの見える化」に範囲を広げようとしている。

一方で、L2スイッチについてはラインアップが充実していたが、市場からはL3スイッチの投入が求められていた。今回、満を持して投入されることが発表されたのが、ヤマハ初となるL3スイッチだ。

  • 写真はヤマハ初のL3スイッチ製品の試作機

今回、市場投入するL3スイッチは「L3スイッチ(X18-R)」で、この製品はバックボーンを構成することを想定し開発されたスイッチであるため、信頼性を高めるためのスタック機能を装備している。また、高速アクセスを実現する10G I/Fを装備している。また、用途に合わせたL3機能を提供できるように、以下の3ライナップを提供する予定だ。

・Light L3 Switch「X18-R-8」(中小企業・SOHO向け)
・Standard L3 Switch「X18-R-24」(中堅企業・学校・病院向け)
・Standard L3 Switch「X18-R-48」(中堅企業・学校・病院向け)

  • 上記3ライナップを比較すると以下の表となる

上記の機能のうち、スタック機能は今回ヤマハ出始めて実装された機能である。これは複数のスイッチを1台に見せる機能であり、冗長性を確保しながら、スイッチの利用効率を高めることができる機能である。また、容易にポートを増設しやすくなることから拡張性を高めることができるようになるのである。

ヤマハは今回のL3スイッチ製品投入により、スイッチ製品は一通りラインアップをそろえたことになる。ネットワークへの負荷が高まり、流通するデータ量が増え、管理体制の効率化と迅速な対応が求められる今後において、企業ユースのスイッチに対して求められる要件も変わっていくはずである。採用されているノンインテリのスイッチはシェアを落とし、インテリなスイッチの低価格化とネットワーク要件の高度化により、インテリスイッチのシェアは増え、結果的にルーターとスイッチは相互の親和性や管理上のメリットを優先して採用されて行くはずである。理由はスイッチが停止するだけでネットワークが停止しm業務に影響を及ぼすため、効率的に安定したネットワーク運営をするうえで、管理をしなければならない機器であるためである。機能現在、市場シェアにおいてはルータとスイッチのシェアはねじれているが、近い将来にはスイッチシェアが変動し、スイッチの世界においてもヤマハのシェアが伸びる日も近いと考える。メーカーを統一したほうが管理が容易なのは言うまでもないからである。

サイズ・設定そのままで超高速化され、進化したRTX830

この秋に、RTX810の後継機種としてRTX830がリリースされている。RTX830の見どころを一言で言えば、大幅に性能が向上された上位互換機と言えるだろう。サイズがそのままで設定もそのままに、古くなったRTX810からRTX810にリプレイスするだけで処理性能が数倍に向上するのが魅力である。

RTX830は性能向上されただけではなく、金属筐体になったり、ケーブルの差し替え時にターミナルの再起動、再接続が不要になったり、通信系とマネジメント系で使用CPUが分離したりなど、現場目線で運用のしやすさと設定のしやすさが向上している。

個人的にはマルチポイントトンネル機能が嬉しい。マルチポイントトンネル機能はRTX1210で実装済みであるが、今回RTX830にも実装されている。マルチポイントトンネル機能では一つのVPN設定で複数拠点へのVPN接続を実現する機能である。拠点の移設増設時の手間が軽減される。

  • マルチポイントトンネル機能

SD-WAN的アップデートを計画するYNO

すべてのヤマハ・ネットワーク機器をクラウドから管理することで、管理負担を軽減することを狙っているYNO(YAMAHA Network Organiser)がヤマハ流のSD-WAN的に進化する計画がある。

ハイライトは以下の通りである。

・GUI Forwarer(新機能として利用可能):現地の端末にログインせずに、ヤマハ・ネットワーク機器のGUIを全てクラウド上のYNO画面に表示・管理できる

・ゼロタッチコンフィグレーション(新機能として利用可能):YNOに登録されたコンフィグレーションを自動配信し、現場ではケーブルをつなぐだけのゼロタッチコンフィグレーションを実現。

・DPIとYNO連携(後日提供予定):ルーターを経由する通信の内容をDPIで分解し、内容によって各種制御に振り分けることが可能に。

  • DPIとYNO連携

まとめ

今回のセミナーでは、新規投入されるL3スイッチの全容とRTX830の高速性能、YNOのSD-WAN計画が理解できた。ヤマハのネットワーク製品の良いところは日本の環境、日本のエンジニアの現場作業の負担軽減をよく考えた製品設計であり、それが13年間SOHOルーター市場でトップシェアを獲得している理由の一つであると考える。今回のイベントにも実際に設計・開発された技術者が展示ブースで説明しお客様の名前の声を直接聞く姿を見れた。ヤマハ・ネットワーク製品の強さの根底にあるのはその姿勢かもしれない。