最先端の皮膚科学研究や美容技術の知見に、デジタルテクノロジーを掛け合わせることで、スキンケアのパーソナライゼーションを実現する新しいスキンケアシステム「Optune(オプチューン)」を資生堂が開発した。11月27日に「Beauty goes Forward.」と題して開かれた記者発表会で発表した。
「Optune」は、iPhoneにダウンロードした専用のアプリケーションソフト「Optune App」により測定した肌データとさまざまな環境データに基づき、独自のアルゴリズムを用いて、専用IoTマシン「Optune zero」が個人やその時々の状態に最適な美容液と乳液を抽出するスキンケアシステム。
専用マシンには、「Optune Shot(オプチューン ショット)」と呼ばれる5種類のカートリッジを装填する。カートリッジは、"乾燥"に着目した「ショットフォー DR」、"酸化"に着目した「ショットフォー OX」、"ストレス"に着目した「ショットフォー ST」の3つのセラム美容液と、「ショット フォー モーニング」「ショット フォー ナイト」のそれぞれ朝用と夜用の保湿液で構成される。
iPhoneでチェックしたその日の肌状態や気象情報などの外部環境、ストレス度合、整理周期のデータを掛け合わせた分析結果から、それぞれ適量の美容液や保湿液が抽出される仕組みだ。5本のカートリッジは肌タイプや肌の悩みに応じて用意され、配合による組み合わせは1,000パターン以上とのことだ。
日々変化する肌に最適なケアを提供
今回、資生堂がこうしたシステムを開発した背景には、肌のコンディションは個々人の遺伝的要素に加えて、気候などの外的要因や、気分や生体リズムなどの内的要因、年齢による要因などが複雑に関連しており、日によっても変化することから、日本を代表する化粧品メーカーとして多くの知見を持つ企業としてより最適なソリューションを提供したいという思いからだという。
また、資生堂では近年、デジタル技術を活用した研究・開発の取り組みと投資を強化しており、IoTによるパーソナライゼーション・サービスを次々と展開している。今回発表された「Optune」もその一環だ。
「Optune」のβ版は、2018年春に資生堂の総合美容サイト「ワタシプラス」にてテスト販売を開始。その後、サービスの改良・開発を進めた上で早期の本格導入を目指すとしている。価格などの詳細は現時点では未定だが、18年1月中旬に「Optune」のブランドサイトにて発表される予定だ。
美容の研究知見に先進技術を掛け合わせる挑戦
発表会の冒頭に登壇した、資生堂ジャパン 代表取締役 執行役員社長の 杉山繁和氏は「常に業界をリードする企業として、革新的な技術でお客様の美を最大化していきたい。今まで培った美に関する研究知見に先進技術を加えて、"パーソナライズド・ビューティー"の理念のもと、1人1人に寄り添ったソリューションを提案するサービスをこれからも続けていきたい」と挨拶。
また、同社で技術開発に携わる執行役員常務の島谷庸一氏は、他の言語と比較した日本語における感性を表わすテクスチャー用語の多さを例に挙げ、「日本語には"もちもち"、"さらさら"、"さっぱり"など肌の状態を表わす、他の言語にはない表現がさまざまにある。色を表わす名前にしてもその数は圧倒的で、日本人の感性はそれだけこまやかで豊かであると言える。日本一の化粧品ブランドとしてこれを活かした商品開発やサービス展開を行いたい」と述べ、同社が創業から100年以上にわたって培ってきたライフサイエンス、ヒューマンサイエンス、マテリアルサイエンスといた研究開発力に加えて、センシング技術やカスタマイズ力で"パーソナライズド・ビューティー"を実現していきたいと意気込みを語った。
島谷氏によると、同社のR&D部門への投資は、2014年に1000人だった研究員数を2020年1500人に、売上比における研究開発費を1.8%から2.5%にまで拡大する方針。2018年には、横浜みなとみらい地区に「グローバルイノベーションセンター」を設立する予定で「あえて都心部に置くことで、よりオープンで異業種・異分野の研究機関や企業との連携・協業を図りたい」とその目的を明かした。