アドビ システムズは28日、Adobe MAX Japan 2017で発表した新書体「貂明朝」が、Typekitの書体ライブラリーに追加されたことを発表した。Adobe Creative Cloud の有料プランに登録しているユーザーは、同フォントを追加料金なしで利用できる。

  • 新書体「貂明朝」

    新書体「貂明朝」

「貂明朝」は、アドビのチーフタイプデザイナーである西塚涼子氏がデザインした、アドビオリジナルの新しい和文書体。躍動感のある手書きの文字の特徴に加え、江戸時代の瓦版印刷に見える運筆の特徴も取り入れているのが特徴。伝統的な明朝体の画線の先端を丸め、やや太めに仕上げ、ふところは小さめになっている。貂明朝は、広告コピー、書籍・出版物のタイトルなど幅広い用途で利用できるデザインとなっている。

また、基本的に和文書体である同フォントの漢字は、JIS X 0208の第一水準と第二水準の漢字、最新の常用漢字と人名用漢字の文字集合を含む6,469文字が含まれる。独自の特徴として、(1)符号化されていない異体字形を含まないこと、(2)それが JIS2004基準であること、(3)ディスプレイ書体であり、グリフはJIS90基準の形よりJIS2004基準の形により近いといった特徴を有している。さらに、他の典型的な日本語OpenTypeフォントと異なる点として、多種の欧文グリフの部分集合が含まれることが挙げられる。

さらに貂明朝には、アドビのType 部門のプリンシパルデザイナーであるロバート・スリムバック氏のデザインによる「Ten Oldstyle」というフルセットの欧文グリフが含まれ、手書きのカリグラフィがもつ素早い筆致と、イタリアルネサンスの古典的人文主義様式の本文用活字書体のもつ実用性を兼ね備えている。これは、日本語フォントでは普通は見かけることの少ない OpenTypeフィーチャーを含み、スモールキャップと罫表組み用数字、オールドスタイル数字などにも対応し、さらにイタリック体も備えている。

  • 「貂明朝」見本

    「貂明朝」見本

そのほか、貂明朝には書体名にある「貂」など、白黒の楽しい形をしたグリフ(字体)がいくつか含まれている。それらを色付きのSVGグリフにしたバージョンの貂明朝が2018年には導入されるということだ。その頃には、貂明朝のOpenType Collection(OTC)版も入手可能となっており、源ノ明朝や源ノ角ゴシックのようなオープンソースのOTCフォントとは異なり、有償での販売だけの製品になるとしている。

なお、現時点において貂明朝はWebフォントとして、あるいは同期することでPC上のデスクトップフォントとして、Typekitのみから利用可能となっている。