アピリオ 代表取締役社長 渡邉崇氏

アピリオはこのほど、「カスタマーエクスペリエンス向上につながる"ワーカーエクスペリエンス"の重要性」というタイトルの下、プレスセミナーを開催した。

アピリオと言えば、プログラムのコンテストおよびソフトウェア開発のクラウドソーシングを行うサービス「Topcoder」を提供する企業というイメージがあるかもしれない。現在は、Topcoderの提供に加え、パブリッククラウドをベースとしたシステム・インテグレーションも行っている。

代表取締役社長を務める渡邉崇氏は、同社のビジネスの差別化のポイントとして、「10年間培ったクラウドを前提とした方法論とツール」を挙げる。クラウドの価値を最大化するためにスピードを重視した形でプロジェクトを進め、グローバルにわたりクラウドベースでプロジェクトを効率的に管理する。

「一般的にクラウドに移行する際、コンサルティングに半年はかかる。しかし、われわれは5、6週間で戦略策定を完了し、導入作業に進めることができる」と渡邉氏。

渡邉氏は2016年にウィプロに買収されてからの事業展開についても言及した。買収後も、「Appirio」のブランドは維持し、独立性を保った子会社として活動しているという。実際、ウィプロの700人のクラウド事業部の人員はAppirioの社員となり、Appirioの人員は2000人を超えている。

そして、同社のクラウド・システムインテグレーション事業において、重要な要素がSalesforce.comとのパートナーシップだ。日本オフィスはもともと、セールスフォース・ドットコムが日本郵便のプロジェクトを遂行する際に立ち上げられた。2社の関係は密接で、売上の9割がセールスフォース・ドットコム関連のものとなっている。

ハッピーワーカーがハッピーカスタマーを生む

アピリオがコンサルティング事業を行う上で核としているコンセプトが「ハッピーワーカーがハッピーカスタマーを生む」だ。モチベーションの高いワーカーが働く企業は、そうではない企業に比べ、顧客ロイヤリティが233%以上、年間の売上成長率が26%以上高いという調査結果が出ている。

渡邉氏はあえて社員ではなくワーカーという言葉を使っていると述べた。ワーカーには、従業員に加えて、ビジネス・パートナー、契約社員、アルバイトなど、そのブランドを支えるすべての人々が含まれる。

アピリオの依頼でフォレスター・リサーチが実施した調査によると、約90%の管理職がワーカーのエクスピリエンスがカスタマーのエクスピリエンスに影響を与えていると考えているという結果が出たそうだ。しかし、そこから先「どうしたらよいかわからないという人が多いのが実情」と、渡邉氏は指摘する。

では、ワーカーのエクスピリエンスを上げることで、カスタマーのエクスピリエンスを上げるにはどうしたらよいのか。

アピリオでは、目指すべき「ワーカーの姿」と「カスタマーの姿」を3段階に分け、企業がこのサイクルを回すことを支援する。

企業の好循環に必要なワーカーとカスタマーの将来像

さらに、ワーカーとカスタマーの将来像のサイクルを回すために必要な力を24に分け、アセスメントによって顧客企業に必要な力を絞り込むという。

企業に求められる24の力

上記の24の力を実現するにあたっては、必要なテクノロジーを見極めることが重要となる。例えば、セールスフォース・ドットコムのCommunity Cloudを活用することで、従業員、カスタマー、パートナーの間で情報を共有し、ワーカー・エクスピリエンスとカスタマー・エクスピリエンスを創出する。

渡邉氏は、同社にとって重要なテクノロジーとして、セールスフォース・ドットコムの「Lightning Bolt」を挙げた。これは、特定の業界の特定のシナリオに合わせてベスト・プラクティスを導入するためのテンプレートだ。

11月7日には、Salesforce Lightningを基盤に構築した新ソリューション群を発表。具体的には、小売/フランチャイズコミュニケーション、小売/フランチャイズプロモーション、従業員コミュニティおよびソーシャルイントラネット向けのソリューション、医療機器発注およびセールス向けのソリューションが発表された。

カスタマーによいエクスピリエンスを提供するのは、そのブランドに関わるワーカーであるため、ワーカーが重要であることは誰もが理解していることだろう。しかし、多くのワーカーをハッピーにすることは簡単なことではない。ワーカーに関して問題意識を持っている企業は、ワーカーのハッピーを向上するために、アピリオが提案している24の力を参考にしてみてはいかがだろうか。