日本ヒューレット・パッカード(HPE)は11月22日、都内で記者会見を開き、データセンター(DC)を管理する人工知能(AI)レコメンデーションエンジン「HPE InfoSight」を発表した。2018年1月に「HPE Nimble Storage」とストレージ製品「3PAR」の全製品に組み込み、提供を開始する。
これまで、InfoSightはNimble Storageのコアテクノジーとして培われてきた予測分析プラットフォームとなり、DCなどにおけるインフラの課題を事前に予測・防止する機能を備える。1月に提供開始する同エンジンには機械学習を活用し、DCの自律化を促すという。
HPEは11月1日にNimble Storageの統合を完了しており、同社製品事業を本格的に開始。HPE Nimble Storage製品のポートフォリオをリニューアルし、オールフラッシュストレージ「AFシリーズ」、ハイブリッドストレージ「CSシリーズ」、セカンダリフラッシュストレージ「SFシリーズ」の全ラインアップの取り扱いを同13日から開始している。
日本ヒューレット・パッカード Nimble営業本部 技術部 部長の川端真氏は「Nimble Storageでは設立した2010年以降からInfoSightの取り組みを開始しており、クラウドベースのモニタリングとデータ分析を行う。グローバルで2万台以上のアレイから1日あたり3000万~7000万のデータを取得し、取得したデータを基にサポート予兆検知などに活用している。収集しているデータは、主にセンサデータやコンフィグ、統計データなどだ」と説明する。
そして「これまでInfoSightで実現できたこととしては、サポート対応の自動化とITインフラの可視化、製品開発へのフィードバックの3つだ」と、同氏は述べた。
サポート対応の自動化では、障害発生時に日々集めている情報を分析し、顧客に影響が出る前に対策をアドバイスするなど少人数で対応を可能としており、サポートの効率化を図っている。これにより、サポートケースのうち9割は自動的にオープンされ、8割は解決策の提供により自動的にクローズとなっている。
ITインフラの可視化では、Web上でIO、レイテンシ、スループットなど容量推移の予測やパフォーマンス分析が可能。また、VMVisionという機能で仮想マシンの情報を集め、ストレージだけでなく仮想環境の情報を可視化できるという。
製品開発へのフィードバックでは、集めた情報を活用し、OSやパフォーマンスなどの改善を行い、99.999928%の可用性を達成している。
川端氏は「現状では、Nimble Storageと3PAR、VMwareまでは情報収集を可能としているが、今後はサーバなど収集ポイントを拡大していきたいと考えている。そして、収集したデータの分析・アドバイスは実現しているため、自動化を可能にすることで現場のインフラ担当者に負担がかからないような仕組みを構築していく」と、InfoSightについて言及していた。
また、同氏は米国限定の「HPE Cloud Volumes」についても説明。同サービスはAmazon Web ServicesやAzure上でアプリケーションを稼働させるためのエンタープライズ品質のマルチクラウドストレージサービスを提供するという。
InfoSightとNimble Storage、3PARの国内販売戦略とは
日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT製品統括本部 ストレージ製品担当マネージャーの諏訪英一郎氏は「Nimble Storageは、新たな顧客価値の創造、新たな市場の獲得、新たなプログラムの3つのアプローチで販売展開していく」と、意気込みを語る。
新たな顧客価値の創造については、従来の受け身の提案ではなく、InfoSightとNimble Storageの強みを武器に積極的な提案活動に取り組むという。
新たな市場の獲得では、新しい商材を既存製品から購入できるようなアプローチではInfoSightのメリットを活かせない可能性があるため、エントリークラス~ミッドレンジクラスの市場においてフラッシュストレージの標準化を推進し、中小規模からエンタープライズ、サービスプロバイダまで幅広いチャネルカバレージにより、新たな市場・顧客に販売していく。
新たなプログラムに関しては「HPE Nimble Storage 99.9999%可用性保証」として、すべてのアレイ製品・保守レベルに対し、99.9999%アップタイムの可用性を保証。年間ダウンタイムが31.536秒を上回る場合は保守料金を返還するという。
また、2018年2月には従量課金によるサービス提供型モデルをリリース。メータリングツールで使用量を可視化し、使用料ベースのストレージ課金とするほか、テクノロジーリフレッシュとして機器の入れ替えの際のデータ移行期間中に新システムの月額料金の請求が発生しないオプションも用意する。
さらに、11月30日には仮想化HAスターターパックと仮想化HAスターター+バックアップパックの2つをパッケージ型ソリューションとして展開していく。
一方、「HPE InfoSight for 3PAR」において初期リリースで提供される機能はクロススタック分析、グローバルな視認性、予測支援を実現する基盤の3つ。クロススタック分析ではストレージとホストとなる仮想マシン間に存在するパフォーマンス上の問題を解決し、その問題の根本原因を突き止める機能をIT部門に提供する。
グローバルな視認性に関しては、新しいクラウドポータルを通じてパフォーマンスの詳細なトレンド、容量の予測、ヘルスチェック、ベストプラクティス情報を確認できるという。予測支援を実現する基盤については、分析と自動化のインフラ導入により将来的な異常の検出、複雑な問題の予測などを可能としている。
なお、HPE InfoSight for 3PARは3PAR OS version 3.3.1 GA以降と、Service Processor version 5.0.3が必要となり、インターネット経由でのHPE InfoSightへの接続を必須としている。
次世代ストレージに求められる要件
日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT製品統括本部 統括本部長の本田昌和氏は「フラッシュ革命の第3の波が到来し、フラッシュは大前提となっており、どのような機能・要件を満たすべきかということで、新たなストレージに対する課題が高まっている。次世代のストレージに求められる要件は予測、クラウド対応、タイムレスの3つとなる」との認識を示す。
予測は、アプリケーションとデータの間に生じるギャップに対し、豊富な測定データとクラウド分析、総合的学習による予測分析で解消されるとしている。
クラウド対応では、日々のITに求められる必須要件であることから、クラウド対応のストレージがオンプレミスの機器とパブリッククラウド間にアジリティとデータモビリティをもたらすと言う。
タイムレスについては、投資への期待値は大幅グレードアップからシームレスな更改、先行投資(CapEx)から伸縮自在(OpEx)、販売訴求から価値の保証に変化しているため、同社では包括型のラインセンス提供や99.9999%の可用性保証、無償テクノロジーアップデートと容易なデータ移行、従量課金、NVMeなど将来のテクノロジーにアプローチしている。