京都大学(京大)は11月17日、チンパンジーが相手に物の位置を伝えたい場合、その距離に応じて伝え方を変えるという能力があることを示したと発表した。
同成果は、霊長類研究所の友永雅己 教授、市野悦子教務補佐員、クロエ・マリー・ゴンセット 研究員(当時)、現在は高等研究院の特定助教である川上文人氏らの研究グループがによるもの。詳細は英国の学術誌「Biology Letters」に掲載された。
私たち人間は、指さしや指示語、代名詞を使うことで、とってほしい物やいっしょに見たい物の位置を、効率的に相手に伝えることができる。そのような文脈や状況に応じたコミュニケーションの能力を進化の視点から探るため、今回、研究グループは、チンパンジーを対象に研究をおこなった。
今回の研究は具体的には、食べ物の位置を距離的に変化させた場合、他者への伝え方に変化が生じるのかという点を調査するために、8人のチンパンジーを対象に、食物要求時の身ぶりについて調査を行った。
具体的には、近いけれどもチンパンジーの手が届かないテーブルに食べ物を置いた「近い条件」(30cm)と、さらに離れた「遠い条件」(130cm)を用意し、そのテーブルの横に人間の実験者が「いる条件」と実験者が部屋に「いない条件」を設定した。その結果、「いる条件」でのみ「近い条件」よりも「遠い条件」でチンパンジーが手を高いところに挙げて、口を大きく開けて食べ物を要求するということがわかった。
これはチンパンジーが相手に物の位置を伝える際、自分と物との距離に応じて身ぶりの表し方を変化させるということだという。ヒトが相手に物の位置を伝える際に「あれ」と「これ」を使い分けるのと同様に、チンパンジーにおいても異なるということを示すものだとしている。
研究グループは今回の成果を受けて、今後、距離以外の情報に関する身ぶりの使い分けがどうなされているのかを調べる必要があるほか、チンパンジーにとどまらず、さらに進化の視点をさかのぼり、他の類人猿やヒトや類人猿以外の霊長類を対象とした研究も必要となるコメントしている。