島津製作所は、富士通、富士通研究所との共同研究で、島津製作所製の質量分析計で得られる測定結果の解析過程で不可欠な大量のデータ処理にAIを活用する技術を開発しており、これまでの研究成果を11月13日~14日に開催された「第11回メタボロームシンポジウム」で発表を行った。
病気の早期発見技術の確立や食品の残留農薬測定など、さまざまな分野の研究・品質管理に用いられる質量分析計は、感度および速度の向上によって得られるデータ量が膨大になっている。そのため「ピークピッキング」と呼ばれるデータ解析が、作業工程のボトルネックになっていた。完全な自動化は難しく、手動による調整がある程度必要なため、作業者の癖や改ざんが入り込む可能性があり、解析の確度にも差が出ていた。近年、医療や創薬の現場では、こうした属人性を排除した高精度な自動化が求められている。
島津製作所、富士通、富士通研究所社の3社は、この課題をAIで解決すべく、脳の神経細胞を模したニューラルネットワークである、ディープラーニングの適用を検討してきた。その過程で、教師データが十分存在しないこと、分析機器が出力する数値をそのままディープラーニングネットワークに入力すると学習が進まないことのふたつの問題に直面した。
今回の共同研究において、島津製作所が「教師データの不足分を補うデータを生成する技術」を、富士通と富士通研究所が「分析装置の出力の特徴を画像に変換する技術」と「熟練作業者の解析ノウハウを学習する特徴抽出技術」を開発し、生成した3万数千件の教師データをディープラーニングネットワークに学習させることができた。
また、熟練作業者の手動によるピークピッキング結果に対して、AIによる自動ピークピッキング結果は、誤検知率7%、未検知率9%であったことから、自動ピークピッキングが熟練作業者に比べて遜色ないレベルで使える可能性が示された。
島津製作所と富士通は、今回得られたAIについて、2018年に質量分析計用ソフトウェアに搭載することを目指しているということだ。