プロトラブズは11月16日、同社が今年グローバルで進めてきたさまざまな施策の状況や、日本国内での取り組みについての説明会を開催。本国の社長兼CEOであるVictoria M.Holt氏がグローバルの、日本法人社長のトーマス・パン氏が日本地域に関する説明を行った。

右が米国Proto Labsの社長兼CEOであるVictoria M.Holt氏、左が日本法人プロトラブズのトーマス・パン社長

同社は近年、安定した成長を遂げてきており、2016年の売上高は2億9800万ドル、今年はそれを上回る3億3000万ドル規模に達する見通しで、2014年から2017年までの年平均成長率(CAGR)も17%に達するという。

そうした同社の好調を支えるのが、次々と実施されるサービスの拡大であり、Holt氏は、「我々がターゲットとする試作や多品種少量生産向け市場の規模は80億ドルと見込んでおり、今の売り上げ規模から考えれば、まだまだ伸び代が残されている」との見方を示している。具体的には、そうした市場の獲得に向け、「顧客数の増加」、「機能の拡充/サービスの拡張」、「新たな製造サービスの提供」といった3つの方針を推進しており、これらをもとにした事業の成長を目指しているとした。

プロトラブズの事業の成長ベクトル。3つの方針を軸に成長を続けている

中でも、近年、急速に進む製造業のデジタル化は同社にとって追い風となっており、同社自身も「THE DIGITAL THREAD」と呼ぶデジタル化を推進する取り組みを強化することで、そうした動きをキャッチアップしてきた。そのため、現在では、ユーザーは同社Webサイトに3D CADデータをいつでも好きなタイミングでアップロードするだけで、数時間以内にプロトラブズから無料製造解析付きの見積もりが送られてくるほか、製造を実際に発注した後は、工場内をそうしたデジタル情報が駆け巡り、それぞれの発注内容に応じた製品の製造が実施され、検査を経て、標準15日以内に出荷される体制が構築されている。Holt氏は、「プロトラブズのデジタルマニュファクチャリングモデルは、試作から新製品の発表、発売、少量生産、製品の製造終了に至る一連のライフサイクルすべてに価値を提供し続けることができる」と、デジタル化でユーザーが得られる恩恵を説明。こうした取り組みの結果、従来の製造プロセスでは試作から製品販売まで7か月必要としていたところを、3か月に短縮でき、他社に先行して市場投入が可能となり、先行者利益の確保と、開発コストの削減が可能になる例も出ているとする。

「THE DIGITAL THREAD」と同社では呼んでいるデジタル化を進めることで、品質を保持しながら製造工程の省略が可能となり、顧客の製品発売までの期間を短縮することが可能となっている

また、同社はグローバルでは射出成形、CNC切削加工、3Dプリンティングの3本柱で製造サービスを提供しているが、毎年、新たな機能の追加などを行ってきており、今年も射出成形向けとしてオンデマンドサービスを介しするなど、新たなデジタルマニュファクチャリングモデルを提供している。「我々は製造されたパーツのクオリティにコミットしており、グローバルで品質改善プログラムも展開してきた。結果として、品質の向上に加え、サイクルタイムの縮小を果たすなど、生産性の向上を実現してきた」(同)とのことであり、プロトラブズは今後も成長してことを強調した。

デジタル化の波に併せて、ビジネスのニーズが試作から多品種少量生産へと移る中、同社でもさまざまなサービスや技術開発を進めてきており、2017年は射出成形のオンデマンド製造サービスの提供を開始した

日本地域での3Dプリンティングサービス提供に向けた検討を開始

一方の日本市場だが、2016年に工場移転を実施して以降、生産能力の強化を進めてきており、2017年11月15日時点で、射出成形の金型生産能力は年間1500型以上となっており、金型あたりの成形数も10営業日で5000パーツ、20営業日であれば1万パーツが可能だとするほか、切削加工の製造パーツ数も年間4万5000パーツへと到達。パン氏によると、「実は今年は設備の増設予定はなかったが、大型パーツ製造の案件が増加してきており、その対応に専用の金型加工機を1台増設したほか、多品種少量生産への対応強化として、射出成形機も2台追加し、合計13台体制を構築。これにより、新製品のすばやい垂直立ち上げを実演するために求められる20営業日で1万パーツが提供できるようになった」と説明する。

日本工場の設備概況。設備投資も継続的に実施しており、生産能力の拡充が進められている

こうした設備投資の背景にもあるように、国内でも従来の「試作」というニーズから、徐々に「多品種少量生産」で同社を活用する、という新たなニーズが拡大しつつあるとのことで、そうした量産で求められる品質の提供に向け、2月21日付けで、品質規格「ISO9001 2015年度版」、環境規格「ISO14001 2015年度版」、情報セキュリティ規格「ISO27001 2013年度版」の3つのISO規格を取得しており、「今後も、品質、環境、セキュリティの3点を重視することで、品質の向上を実現しつつ、省力化や効率化の向上も実現していくことを目指す」(同)としていた。

また、さらなるサービスの拡充として、切削加工事業では、材料として新たにアルミ(A2017)を国内工場で対応したほか、銅(C101)およびチタン(Ti-6AI-4V)も米国での製造という形ながら対応を開始。これにより、従来材料と併せて合計7種類の金属の対応が可能になったという。さらに、米国本社で6月よりサービスを開始した5軸加工オプションの受付も開始、7種類の材料の加工に対応できるようになったとする。

一方の射出成形事業では、2016年に開始した「二色成形サービス」向けとして、新たに硬質樹脂×硬質樹脂への対応を実施したほか、米国での製造対応となるが、LSR(液状シリコーンゴム)の標準在庫が41バリエーションに拡充されたとする。

なお、現状、日本工場では3Dプリンティングサービスは提供していないが、パン氏は「サービスの提供を行いたい」という意向を示しており、どのような3Dプリンタであれば、国内市場のニーズに合致するのかといった検討を進めている最中であると説明している。また、2018年以降の目標としては、現在、米国工場を活用することで対応している5軸の切削加工ならびにLSRの射出成形の国内内製化に向けた検討も進めていきたいとしており、今後も日本のユーザーニーズにマッチしたプロトラブズとしてのブランド価値を高めていく取り組みを積極的に展開していくことで、より多くの産業での活用を目指していくとしていた。