理化学研究所(理研)は11月9日、「ペルフルオロアルキル化合物ライブラリー」の構築を目的としたペルフルオロアルキル基を持つ含窒素複素環化合物の実用的な合成反応を開発したと発表した。
同成果は、理研袖岡有機合成化学研究室 河村伸太郎研究員、袖岡幹子主任研究員らの研究グループによるもので、10月31日付の米国科学誌「The Journal of Organic Chemistry」オンライン版に掲載された。
新薬開発やケミカルバイオロジー研究における生理活性分子の探索は、通常、大量の化合物を収集した「化合物ライブラリー」からハイスループットスクリーニングによって、リード化合物を見つけることから始まる。
一方で、ペルフルオロアルキル化合物が、近年医薬品や農薬として注目されているが、ペルフルオロアルキル化合物ライブラリーを構築するには、コストや安全性、反応効率を考慮した実用的なペルフルオロアルキル化合物の合成手法が必要であった。
同研究グループは、ペルフルオロアルキル化合物からなる化合物ライブラリーを構築できれば初期スクリーニングの段階で従来のプロセスでは見つからなかったユニークなリード化合物を探索できると考え、今回、安価で入手容易な原料から多様な化合物を合成できるペルフルオロアルキル化反応の開発を試みた。
具体的には、ペルフルオロアルキル源として安価で入手容易なペルフルオロ酸無水物を用いて、アミノ基を持つアルケンの含窒素複素環の形成を伴うペルフルオロアルキル化反応を開発。また、銅触媒を用いることで生成物の選択性を制御し、さまざまな含窒素複素環を持つペルフルオロアルキル化合物の合成を可能にした。さらに、得られた生成物を誘導化することで、より複雑な骨格を持つ分子へ変換することにも成功している。
含窒素複素環を含むアミン類は生理活性分子の主骨格にみられることから、同研究グループは、今回の研究により得られた化合物はペルフルオロアルキル基との両方の長所を兼ね備えたハイブリッド分子になるものと考察している。