ベルギーの独立系ナノエレクトロニクス研究機関Imecは11月13日、東京都内で「Imec Technology Forum Japan 2017」を開催するにあたって、パナソニックと共同で、リチウムイオンの電導率が液体同等物質の数倍ある次世代車載電池向け固体ナノコンポジット電解質を開発したことを発表した。

この電解質は、自動車はじめエレクトロニクス製品向けの高エネルギー電池の急速充電に適しているとのことで、すでに室温でのイオン電導度は、数mS/cmに達しているが、数年後には100mS/cmに向けて新しい固体ナノコンポジット電解質材料を開発することを目標に設定しているという。

リチウムイオン電池は、電気自動車市場やポータブル電子機器市場で今後さらに活用されるが、高速充電の高エネルギー電池としての目標を達成するためには依然としてかなりの革新を必要とする。このための研究を加速するために、Imecは固体バッテリーに焦点を当てたパートナープログラムを立ち上げ、それにパナソニックが参加する形で、今回の共同開発に至ったという。

「Imecのユニークなメリットの1つは、最新の半導体知識を、スマートなエネルギーなどの他の研究分野の課題に適用することで、それらの課題を解決できるということにある。こうした取り組みの結果、今回、液体から固形物を堆積する化学的手法で固体ナノコンポジット電解質(SCE)を開発することができた」と、Imecのテクニカルスタッフ兼プログラムマネージャであるPhilippe Vereecken氏は述べている。

Imecとパナソニックが共同開発した固体ナノコンポジット電解質は、特定の表面化学およびイオン性塩で官能化されたメソポーラスシリカモノリスであるという。すでに、室温で3~10mS/cmのLi-ion導電率を達成しているほか、この新しい電解質技術を用いて、負極にチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、正極にリチウムリン酸鉄(LiFePO4)を含む充電式固体リチウムイオン電池を作製し、その性能実証もすでに終えたとしている。

なお、今回の成果の詳細は、11月14~16日に福岡市で開催される「第58回電池討論会 国際セッション(Battery Symposium)」において「Mechanism Analysis of Li-ion Conductivity Enhancement in Porous Silica-based Solid Nanocomposite Electrolytes(多孔質シリカベースの固体ナノコンポジット電解質を用いたLiイオン電池におけリチウムイオン伝導率向上のメカニズム解析)」と題して、ならびにリチウムイオン電池(助剤)において「メソポーラスシリカを用いたコンポジット電解質でのリチウムイオンの伝導促進」と題して、それぞれ発表される予定となっているという。

Imecとパナソニックが開発した固体ナノコンポジット電解質 (出所:Imec)