DICは、同社と神奈川工科大学が共同開発した、近赤外蛍光を発する色素を利用した3Dプリンタ造形物に著作権所属、設計者、あるいは取扱い仕様といった情報を埋め込むことを可能とする新技術を開発したことを発表した。
3Dプリンタは、企業のみならず一般家庭にも普及が進んでいる。その造形物の設計データはネットを介して入手でき、一般消費者が自宅でも製造することも可能となっている。その一方で、3DプリンタとIoTとの連動も模索されており、造形物に情報を埋め込む技術が検討されています。
現状ではICチップなどの利用が検討されているが、別部品を用意して造形物に埋め込むことになり、工程数やコストの増加につながるため、その結果、誰もが特殊な製造技術を持たなくてもモノを作れるという3Dプリンタの特徴が失われてしまう。
このたび新たに開発された技術は、3Dプリンタでモノを製造する際、同時にその内部に同社が開発した近赤外蛍光色素を用いた樹脂で情報パターンを形成するもの。造形物用と情報パターン用の樹脂を使用するため、2ヘッドの3Dプリンタが必要となるが、ICチップなどの部品を必要とせず、同一工程による効率的な製造プロセスで外部意匠に影響を与えることなく情報パターンを内部に造形できる。
この造形物に外部より物質を透過しやすい近赤外光を照射すると、内部に造形されている色素含有のパターンが反応し近赤外蛍光を発する。その蛍光を近赤外線カメラで観察することで、パターン像を認識することができる。この内部に形成された文字やコードなどの情報パターンにより、造形物はIoT技術における「モノ(Things)」として認識できるため、それがもつ価値は飛躍的に向上するとしている。
同社は、近赤外蛍光色素を活用して既にいくつかの大学や企業と連携し、医療の発展や社会課題の解決に寄与する技術開発を行ってきた。同社はこの技術に関して、3Dプリンタ造形物の高付加価値化を含め、さらなる用途展開が可能であると考えているとしている。