大阪大学は、市立吹田サッカースタジアムにおいて、ミリ波を用いた次世代(5G)無線通信実験を行い、未来のスマートフォンなどの通信速度の大幅な向上に有効であることを明らかにしたと発表した。
同研究は、大阪大学大学院基礎工学研究科の村田博司 准教授がリーダーを務めている日欧国際連携共同研究プロジェクトRAPIDによるもので、同研究成果は、12月4日に無線・アンテナ関係の国際会議「2017 IEEE CAMA」において、公開される予定となっている。
5G無線で利用されるミリ波は高速通信に適しており、電波干渉を小さく抑えることが可能なため、スタジアムのような多くの人が集まる環境での利用が非常に期待されている。しかし、世界的には4G無線の普及がまだ進んでいないこともあり、実際のスタジアム環境での5G実験は今まで報告されていなかった。また、通信のためのアンテナ局を多数設置する必要があり、アンテナ局のコストを低く抑えることが大きな課題になっていた。
村田准教授らの研究グループでは、アンテナ局をシンプルなリモートアンテナとして動作させることで低コスト化を実現することを提唱している。これは、従来、アンテナ局で個別に行っていた、無線信号の処理機能を中央局に集中させて、多くのアンテナ局で共用することで、システム全体のコストを抑える構成となっている。今回の通信実験では、研究所アンテナ局の構成の簡素化に有効な新たなアンテナの開発や、光ファイバ無線を用いた伝送システムの設計・試作を行い、スタジアムでの実証試験に成功したという。また、既存のWi-Fiや4Gなどの通信システムとミリ波を連携することも重要なため、モバイルIP技術を活用することで、Wi-Fiや4Gとミリ波の通信を自動で適切に切り替えることができるシステムを開発し、同実証試験でその動作を確認したということだ。
同研究成果により、ミリ波の通信のためのアンテナ局を客席の天井などに分散配置することで、スタジアムのように大勢の観客が着席しているような環境において、高速な通信が可能であることが実証された。今後、オリンピックやワールドカップでの5G無線の開発がますます加速することが期待されるということだ。