市場動向調査企業TrendForceの半導体メモリ調査部門であるDRAMeXchangeは10月30日、2018年のDRAM生産能力予測の最新版を公表し、Samsung Electronicsが韓国ソウルの南約70kmに新設した平澤工場の計画を従来のものから変更し、ライン17の生産能力を拡大してDRAMの生産能力を増強することを検討している可能性があることを明らかにした。
平澤工場の2階の一部は、本来、3D NAND型フラッシュメモリの生産が計画されていたが、最新の調査によるとDRAMウェハを製造する方向で検討が進んでいる模様だという。また、平澤工場におけるDRAM生産が全面的に最先端となる18nmプロセスになる可能性もあるほか、ライン17には、さらなる生産能力拡大に向けた余地も残っているとしている。
長期的には業界にプラスに働く可能性が高いSamsungのDRAM増産
Samsungが、DRAMeXchangeの予測のとおり、DRAMの生産能力を増強するのであれば、同社の2018年におけるDRAMの月産枚数は前年比で8万~10万枚ほど増加することが見込まれる。SamsungのDRAM生産能力は、2017年12月には月産39万枚に達すると見られているが、これが2018年末には50万枚に増加する可能性が出てきたということになる。また、DRAMeXchangeは、これまでSamsungの2018年のDRAMビット供給量の年間成長率を、前年比18%増と予測していたが、DRAMの生産能力が増強されれば、この年間成長率の値も同23%まで上昇する可能性があるとしている。
DRAMeXchangeの分析によると、SamsungのDRAM生産能力増強計画は、現在の需給ひっ迫状況を軽減するためと同時に、競合他社の利益拡大をけん制し、新規参入の障壁を高める狙いがあるようだ。中国のメモリ業界は、2018年には製品開発段階に入ると予想されているが、Samsungが生産能力を高めれば価格競争力などの面で参入障壁が高まり、こうした中国のDRAMとNANDメーカーによるキャッチアップを防ぐことにつながるという。
DRAMの供給量が増加すると価格が安定することから、サプライヤの収益性は通常の水準にもどることが見込まれる。また、NANDの増産に注力してきたメモリメーカーがDRAMへの増産に投資するようになれば、2018年に予想されていたNANDの供給過剰状態も緩和され、結果としてNANDの平均販売価格の低下もより穏やかになる可能性もあることから、SamsungのDRAM生産能力の増強が事実だとすれば、半導体メモリ業界全体の長期的な発展にとってマイナスにはならないとDRAMeXchangeは見ている。
DRAMの増産で需給ひっ迫が終わる可能性も浮上
ちなみに直近の2年間を振り返ると、半導体メモリメーカーはNANDの増産に注力してきたことから、DRAMの生産能力はわずかしか伸びてこなかった。また、微細化に伴う取れ数の増加も、技術的な困難から歩留まりが高まらなかったことから、供給量の伸びが鈍化。そうした結果、2016年下期からDRAMの価格が徐々に上昇、以降、2017年第4四半期に至るまで価格は上昇を続けてきた。
しかし、SamsungがDRAMの生産能力を増強すれば、需給のひっ迫が解消される可能性もでてくる。大手DRAMサプライヤの営業利益率は、トップのSamsungで59%、2位のSK Hynixでも54%、3位のMicron Technologyで44%といずれも高い。2017年の第4四半期のDRAM販売契約価格は、従来よりも高いことから、各社の利益はさらに増すことが予想されており、このような利益増大や株高を背景に、SK HynixやMicronも今後、生産能力を増大させる可能性がでてきたとDRAMeXchageは市場の動きを見ているという。