凸版印刷とNTTドコモは11月6日、遠隔観光体験やスポーツ観戦、コンサート鑑賞、遠隔就労などの用途を想定した「IoA仮想テレポーテーション」のプロトタイプ実証実験を公開すると発表した。

IoA仮想テレポーテーションは、凸版印刷が東京大学大学院情報学環 暦本研究室(教授:暦本純一氏、以下、東京大学暦本研究室)とのIoA(Internet of Abilities:能力のネットワーク)共同研究の成果をベースに、2020年の実用化を予定しているドコモの第5世代移動通信方式(5G)の検証環境である5Gトライアルサイト向けに開発したプロトタイプ。

IoAとは、暦本氏により提唱された未来社会基盤で、人間とテクノロジー・AIが一体化し、時間や空間の制約を超えて相互に能力を強化することを実現するものとなる。

両者は昨年7月からIoAの共同研究を開始し、スポーツイベントや博物館・美術館、工場などに配置したテレプレゼンス・ロボット(遠隔地にあるロボットの視覚情報、センサ情報などを受けて、リアルタイムにロボットを操縦・制御することにより、遠隔地にいながら、その場にいるような臨場体験を持つことができるロボット技術)を遠隔にいる見学者や誘導者が操縦して実際に現地にいるかのような体験や見学ができる、遠隔体験ソリューションの実現を目指している。

また、同プロトタイプは「遠隔地の分身ロボットに乗り移り、その場所に自分が存在するかのように自由に移動」「分身ロボットの曲面ディスプレイに自分の身体が投影され、対面者へ自分の存在を強調」「5Gネットワークにより、高精細かつシームレスな新臨場体験の享受」の3つの技術を組み合わせ、臨場感を伴う遠隔体験を実現している。

実証実験は、ドコモが開催する展示イベント「見えてきた、"ちょっと先"の未来 ~5Gが創る未来のライフスタイル~」で実施。分身ロボット(4K360カメラ搭載遠隔操縦ロボット)、WebRTC、OLED大型伝送ルーム等の要素技術で構成されており、ロボットに取り付けられた360度カメラが周辺の空間情報を収集し、WebRTC技術によりネットワーク経由で会場内に設置した伝送ルームのスクリーンに送られ、ロボット視点の空間情報がリアルタイムに再現される。

IoA仮想テレポーテーションの概要

さらに、伝送ルーム内の人物をロボットに搭載されたOLCD曲面ディスプレイに表示することで、伝送ルーム内の人物を仮想的にテレポーテーションさせ、ロボットのいる場所と伝送ルームとの間で双方向のリアルタイムコミュニケーションを行うことを可能とし、高速・大容量の5Gネットワークにより高精細かつシームレスな新臨場体験を来場された人に提供するとしている。

OLED大型伝送ルーム

分身ロボット

両者では遠隔体験ソリューションに加え、遠隔就労ソリューション、遠隔教育ソリューションなどを想定している。遠隔体験ソリューション、消費者のライフスタイル、障害などの身体的制約に合わせた新たな現場体験機会の創出や企業にとって新たな顧客獲得機会の創出や企業設備の有効活用を促進などを図り、例として遠隔観光体験、スポーツ観戦・コンサート鑑賞、住設、自動車メーカーなどの企業ショールームの遠隔体験、ブライダル等の冠婚葬祭時の遠隔参加などを挙げている。

遠隔就労ソリューションは、働き方改革・ワークライフバランス・長時間通勤・残業問題・共働き共育て社会・家事と仕事の両立・介護生活などの社会課題解決や、企業の熟練労働力による遠隔接客作業支援・能力保有者の集約による経営効率化をはじめ、無人店舗ソリューション、多言語翻訳派遣ソリューションなどを検討。

遠隔教育ソリューションは、児童・生徒に向けの遠隔型校外学習といった入場が制限された環境での新たな学習機会の創出や、学校が実践的で付加価値の高い教育環境の選択肢の提供など、例えば博物館・美術館、メーカー工場をはじめとした遠隔見学を想定している。

凸版印刷は実証実験の成果をもとに2018年より、メーカー、流通、サービス、教育機関、博物館など向けに、IoA中核技術と同社のソリューションを組み合わせた新しいソリューションを段階的にスタートさせる予定。一方、ドコモは5Gトライアルサイトでの実証実験の成果を基に、IoA技術などの新技術により実現可能となる新たなサービスを提供できるプラットフォームとしての5Gの研究開発を推進していく方針だ。