富士通とシンガポールの再製造技術開発センター(Advanced Remanufacturing and Technology Centre、ARTC)は11月2日、製造業におけるデジタルトランスフォーメーションの加速化を目指し、ARTCが推進する今後の製造工場のあり方を具現化するプロジェクトである「Factory of the Future」の推進に向けた戦略的提携で合意したと発表した。

両者は今後3年間の提携の中で、製造業が直面している多様な課題への対応と、より高度な製造技術をベースとするエコシステムの実現に向け、それぞれが持つ専門知識及び最先端施設を利用していくという。

今回の提携を通じて両者は、中小企業も含む製造業のサプライチェーンに関わる多様な企業のデジタルトランスフォーメーション、生産性と効率性の向上、セキュリティリスク最小化、安全な労働環境づくりを統合的に実現するソリューションを共同で開発していく。

提携における主な対象領域は、インダストリアルIoT分野における標準アーキテクチャーの研究、富士通の製品開発向け統合設計環境の提供、製造業向けウェアラブル技術の開発、スマート工場におけるサイバーセキュリティ対策、ヘッドマウントディスプレイを利用した製造業向けARアプリケーションの開発、製造業におけるAIの利用促進、人とロボットによる協働の実現に向けた研究、製造工程での異常検知や予防保全を可能にする機械学習ソリューションの開発の8点。

インダストリアルIoT分野における標準アーキテクチャーの研究では、製造業における生産性と効率性の向上に向け、インダストリアルIoT分野の主な課題という、オープン環境でのデバイスと装置間の相互運用性と異なる実行環境下で利用可能な標準アーキテクチャーの確立に向けて共同で取り組む。

また、センサー/ネットワーク/データシステム/セキュリティ/アプリケーションといった要素を対象とする標準アーキテクチャーを共同研究するとしている。

製品開発向け統合設計環境の提供については、両者はARTCに加盟するパートナー企業の専門家とも協力し、製造工程と設計プロセスの連携を支援する富士通の製品開発向け統合設計環境の利用による、多国籍企業や中小企業を含む製造企業のデジタル化に取り組んでいく。

製造業向けウェアラブル技術の開発に関しては、製造現場における労働環境の安全性強化を図るため、作業員のバイタル情報や活動状況、位置情報を把握するための、ウェアラブル技術を開発する。

スマート工場におけるサイバーセキュリティ対策では、製造工程におけるデータの損失や稼働リスクの最小化を視野に、スマート工場のサイバーセキュリティ対策で必要な要件を提案し、その要件に基づいたベストプラクティスを特定する。さらに、推奨すべき最適なソリューションと導入プロセスを検討していくという。

製造業向けARアプリケーションの開発については、製造現場での情報連携の強化による生産性向上に向け、ヘッドマウントディスプレイとAR技術を利用したアプリケーションを開発。これにより、アクセスが困難なエリアや大規模な工場で働く作業員の遠隔支援を強化するとしている。

製造業におけるAIの利用促進では、製造の効率性向上やコスト削減の実現に向けた深層学習や機械学習などのAI技術の利用方法を、試作試験やPoC(Proof of Concept)を通じて検討するという。

人とロボットによる協働の実現に向けた研究に関しては、Factory of the Futureにおいて人とロボットの協働を実現するには、ロボットのプログラミングとシミュレーションのための新たなツールが必要になるといい、そのようなツールの実証環境を構築し、有効性の検証を行う。

機械学習ソリューションの開発については、製造業の多様な現場において機械学習を利用した異常検知や予防保全を可能とする、ソリューションを開発するという。

両者は、AIとロボティクス、ヘッドマウントディスプレイを利用したAR技術、サイバーセキュリティ、ウェアラブル技術、製造分野における人とロボットの協働などの領域において、関連技術の共同開発に取り組んでいく。また富士通は、日本でのこれまでの経験を踏まえ、製品開発向け統合設計環境をグローバルに提供するとしている。