ヴイエムウェアは10月31日、年次イベント「vFORUM 2017 TOKYO」を開催した。今年は、「データセンターのモダナイゼーションによるスピードと俊敏性の向上」「ビジネス ニーズに対応するためのあらゆるクラウドの連携」「従業員への優れたモバイル環境の提供」「データ、企業ブランド、お客様からの信頼の確保」の4点をメインテーマとして展開。
ゼネラルセッションには、米VMware 最高経営責任者 パット・ゲルシンガー氏、ヴイエムウェア 代表取締役社長のジョン・ロバートソン氏が登壇し、同社のクラウド戦略、それを支えるソリューション、導入事例を紹介した。
マルチクラウドの一貫した運用と管理を実現
VMwareは、顧客があらゆるクラウドを利用することを可能にすることをビジョンとして掲げている。ゲルシンガー氏は、プライベートクラウドについて、「より簡単に活用できることを実現しようとしている」と述べた。
これを実現するソリューションが、コンピューティング、ストレージ、ネットワーク、運用の自動化がパッケージされた「VMware Cloud Foundation」となる。「VMware Cloud Foundationはプライベートクラウドに必要な要素がすべて提供されるので、一から構築する必要がない。さらに、vSphere、vSAN、NSXが最新の状態で使うことができる」とゲルシンガー氏。
プライベートとパブリッククラウドにまたがるハイブリッドクラウドに対し、同社が一貫した運用とインフラを提供していることをアピールした。これを具現化するサービス群が「VMware Cloud Services」となる。
「VMware Cloud Services」は現時点で、7つのサービスが提供されている。これらのサービスには、VMware AppDefenceというセキュリティのサービスが含まれている。
ゲルシンガー氏は、「セキュリティの役目はアプリケーションとデータを守ること。企業は今、セキュリティに多大な投資を行っているが、サイバー攻撃は収まる気配はなく、新たなアプローチが必要」と述べ、VMware AppDefenceでは独自のアプローチをとっていることをアピールした。
「これまで膨大な量のパケットから悪を追跡してきたが、非常に難しい。そこで、われわれは善を保証するというアプローチをとることにした」(ゲルシンガー氏)
「AppDefence」はVMware vSphereとVMware NSXを活用して、「アプリケーションの状況の把握」「脅威の検出」「対応の自動化」を行う。具体的には、アプリケーションが意図した状態を「仮想マシンのマニフェスト」として作成し、これに反する動作を検出したら、対処を行う。
VMware Cloud on AWSの国内提供は2018年第4四半期に
ロバートソン氏は国内のビジネス概況について説明した。同氏は国内で導入が進んでいるソリューションとして、SFDC、NSX、vSAN、Workspace ONEを挙げた上で、デジタルワークスペースを実現するWorkspace ONEは世日本が世界で最も導入が進んでいると述べた。
続いて、国内における協業の紹介が行われた。最初に紹介されたのは、今年10月に発表された日立製作所との協業だ。両社は、金融や公共分野をはじめとする社会インフラ向け高信頼プラットフォームの提供を目的に、ソリューション開発に関する協業を拡大する。協業の下、2018年春をめどにVMware vSphereをベースとした高信頼なプラットフォームソリューションを金融分野のシステム向けに提供開始することを予定している。
次に紹介されたのは、今年3月に発表された富士通との協業だ。その内容は、自動車業界向けにIoTソリューションを提供するというものだ。両社は協業の下、コネクテッド・カーのためのクラウドサービスを提供する。
ロバートソン氏が最後に紹介したのは、昨年発表されたAmazon Web Services(AWS)との協業だ。協業の下、AWSのベアメタル上にVMwareの環境を構築する「VMware Cloud on AWS」を提供する。オンプレミス向けのソフトウェアを提供するVMwareとパブリッククラウドベンダーのAWSが手を組んだということで、業界には驚きが走った。
ゼネラルセッションには、アマゾン ウェブ サービス ジャパン 代表取締役社長の長崎忠雄氏が登壇し、「これまでは、AWSかVMwareを選択する必要があったが、それが不要になる。われわれのユーザーも好意的に受け止めている」と語った。
今年8月に開催された「VMworld 2017」では、オレゴンリージョン(Amazon Web Services:AWS)での提供開始を発表。日本ではいつ提供が開始されるのか注目を集めていたが、ロバートソン氏は「日本では2018年第4四半期に提供を開始する」と明らかにした。
VMware Cloud on AWSの先行ユーザーであるリコーとNRIも登場
同社のソリューションを利用している企業の紹介も行われた。NECは、働き方改革を目的として、デジタルワークスペース「VMware Workspace ONE」を導入しているとして、スマートネットワーク事業部 事業部長の市竹史教氏が説明した。
市竹氏は、「それまで使っていたソリューションには、国内に閉じていた、Windows 10を管理できないという課題があった」と述べ、VMware Workspace ONEは「グローバルで利用できる、Windows 10を管理できる、この2点が導入の決め手だった」とした。
また、みずほ情報総研は「VMware NSX」をベースにSoftware-Defined Network(SDN)を導入している。銀行システムグループ 専務取締役の向井康眞氏は、「SDNを導入した理由は、物理ネットワークと仮想ネットワークの双方の最適化を実現するため。SDNを導入する前は、システムの変更作業を行う際に、サーバ担当者とネットワーク担当者の調整が必要だった。SDNを導入したことで、サーバ担当者が自由に作業できるようになった」と説明した。
そして、VMware Cloud on AWSのEarly Access ベータプログラムのユーザーとして、リコー デジタル推進本部 情報インフラ統括部 部長の若杉直樹氏、野村総合研究所(NRI) 執行役員 基盤サービス本部長の安齋豪格氏が登壇した。
リコーの若杉氏は、VMware Cloud on AWS利用の背景について、「プライベートクラウドを利用していたが、トラブルが続き、パブリッククラウドを利用するという方針に転換した。VMware Cloud on AWSには、コスト、運用、セキュリティの面で期待している」と説明した。
その一方で、「ベータプログラムということで、まだ機能に制限がある。NSXが利用できない点が特に残念。また、早く日本リージョンからも提供してほしい」としながらも、「vCenterで管理できるのは魅力」と語った。
NRIの安齋氏は、「VMware Cloud on AWSにより、改修を行うことなく、既存のアプリケーションを生かすことが可能になる。老朽化したデータセンターを抱えるユーザーはこの機能を活用して、データセンターの移行をスムーズ行えるだろう。金融業もパブリッククラウドを使いたがっているので、金融業界で遵守が求められるFISC、PCI DSSといった法規制にも対応してもらいたい。また、バックアップサイトとしての用途を考えると、東京のほか、大阪リージョンからの提供も期待したい」と述べた。
今回、発表以来、注目を集めている「VMware Cloud on AWS」の国内提供時期が明らかになった。先行ユーザーからはさまざまなフィードバックが寄せられており、一般提供が開始される際はそれらを盛り込んだ形で提供していくという。AWSとVMwareの双方のメリットが得られる形での提供を期待したい。