アイテック阪急阪神は、阪急阪神ホールディングスのグループ会社で、社会システム事業、インターネット事業、医療システム事業、ソリューション事業、システム開発受託事業、技術サービス事業を手掛ける企業だ。
同社のマルチメディア事業部では、ECパッケージや電力自由化パッケージのほか、インターネットサービスプロバイダ事業やホスティングなどのビジネスを手掛ける。また、世の中のクラウドへのシフトにともない、2013年10月からはサーバ構築から設定変更、24時間365日監視と障害対応、バックアップなどを行うフルマネージドのPaaS提供を行い、300ほどの仮想マシンを運用管理。現在では、同事業部のメインビジネスに成長している。
同事業部では、PaaS提供から3年が経った2016年10月ころから、今後、ストレージ容量が不足することが予想されたため、新たなストレージ環境の導入の検討を始めた。
同事業においては、それまで大手ストレージベンダーの製品(20TB)を利用しており、大きな障害もなく、順調に運用を行っていた。そのため、当初は、そのベンダーのストレージを追加導入することを検討したが、付き合いのあるSIerから仮想化環境向きのストレージとして、ティントリ製品を薦められ、あわせて検討を始めたという。
アイテック阪急阪神 マルチメディア事業本部 IPソリューション部 ネットワーク技術課長 奥裕之氏は、ティントリのストレージについて、「VM単位のQoS設定やスナップショットが簡単に行えると聞いて、運用が楽になるのでは思い、興味を持ちました」と語る。
また、アイテック阪急阪神 マルチメディア事業本部 IPソリューション部 ネットワーク技術課 主事 森本健一氏は、「互いの製品の機能比較も行いましたが、ティントリに興味持ったのは、技術者としての直感です」と笑う。
ただ、さすがに直感だけでは導入できないため、2週間ほど負荷をかけたテストを行い、最終的にフラッシュとハードディスクを組み合わせたティントリのハイブリッドモデルT885を1台(60TB、実効容量120TB)追加導入することを決定した。
森本氏はティントリ製品を採用した理由を次のように説明する。
「仮想マシン単位にQoSが設定できる点を評価しました。サーバを共用で運用していましたので、これまで特定の仮想マシンが異常な負荷をかけ、他の仮想マシンに影響を与えることがありました。このような場合、これまでのストレージでは対応することが難しかったのですが、ティントリの場合は自動で制御できるので、その点が一番気に入りました。お客様から、『処理が遅くなったのですが・・・』という問い合わせがくることがありますが、VM数が200~300になってくると、これまではどのVMが影響しているのかを判断することは、ほぼできませんでした。今後は、そういうことががなくなると思います」(森本氏)
一方の奥氏も、「これまでのストレージも安定しており、支障はありませんでしたが、運用において何か障害が発生した場合、どの部分がボトルネックになっているのかを素早く切り分けることが重要になります。ティントリの場合、ネットワークで遅いのか、サーバのリソースが枯渇しているのかがわかるので、運用者からするとやさしいシステムになっています。今後、VM数が増えていくにつれ、運用の負荷が確実に増えていくので、その負担を軽減してくれるのはありがたいと思います」(奥氏)
同社では、2017年から9月から移行を開始し、ティントリストレージを利用しての本番稼働を開始。約300あるVMのうち、200程度をT885に移動し稼働させている。
また、森本氏は運用面でリカバリの容易さもメリットとして挙げた。
「スナップショップから復元する場合、これまでは復元に2-3時間かかりましたが、ファイルを指定することなく自動で復元できるのですぐに対応でき、そのあたりも楽だと感じました。お客さんも早く戻してほしいとあせっているなかでは安心です」(森本氏)
同社は現在、大手ベンダーストレージ(20TB)とT885(60TB)を並行で利用しているが、今後について奥氏は、「大手ベンダーのストレージは来年保守契約が切れるので、そのときにどうするかを検討します。使い分けもあると思いますが、統一する方法もあるかと思います」と、今後検討していくとした。
そして最後に森本氏は、ティントリに対する要望として、ポートフォリオの拡充を挙げた。
「基幹システムを導入するお客様もでてきており、IPBといった大容量のストレージが必要な場合もあります。何でも入れられるクラウドストレージがでてきてほしいと思います」(森本氏)