東京大学(東大)と東北大学は11月1日、ガラスに固有な分子振動のパターンを大規模コンピュータシミュレーションによって解析し、ガラスと通常の固体の振動特性が本質的に異なっていることを発見したと発表した。

同成果は、東京大学大学院総合文化研究科 水野英如助教、池田昌司准教授、東北大学金属材料研究所の芝隼人特任助教らの研究グループによるもので、10月31日付の米国科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」オンライン版に掲載された。

固体中の分子は、絶えず振動運動を行っており、この分子振動の固有なパターンは、音波として知られている。固体を叩いたときに音を感じるのは、この音波が励起されるためである。音波は空間的に広がった波であり、デバイ則と呼ばれる物理法則で記述できるが、ガラスにはデバイ則では説明できない振動パターンがあることが古くから示唆されていた。

今回、同研究グループは、分子レベルの大規模なコンピュータシミュレーションを行い、ガラスに固有な振動パターンを解析した。この結果、ガラスにも、通常の固体に存在する音波が振動パターンとして存在し、かつその音波がデバイ則に従うことがわかったが、ガラスにはその音波に加えて、音波とはまったく異なる空間的に局在化した振動パターンが存在することが明らかになった。この局在振動は、デバイ則とは異なるまったく新しい法則に従うという。

同研究グループは今回の成果について、ガラスが通常の固体とは本質的に異なることを決定的に示すものであり、長年論争となっていた、ガラスの振動特性の問題に終止符を打つものであると説明している。

左:ガラスで作られたコップ 右:コンピュータシミュレーションによって計算されたガラス。分子は不規則な状態で配列する (出所:東北大Webサイト)