大阪大学(阪大)は10月30日、培養した細胞の集合状態を3次元の塊と2次元の単層状態とのあいだで自在に制御できるようにする新規高分子を開発したと発表した。
同成果は、大阪大学産業科学研究所 永井健治教授、東京工業大学生命理工学研究科 丸山厚教授、嶋田直彦助教、九州大学先導物質化学研究所 木戸秋悟教授らの研究グループによるもので、米国科学誌「ACS Applied Materials Interfaces」に掲載されている。
従来の典型的な細胞培養法では、細胞培養皿を用いた2次元的な平面培養法や、浮遊培養などを用いる3次元の塊状培養などが多用されるが、これらのあいだでの自在な転換技術は開発されていなかった。
同研究グループはこれまでに、尿素基を側鎖にもつウレイド高分子を独自に開発しており、同高分子が生理的pHおよび塩濃度条件下において、加熱によって溶解し、冷却によって非溶解状態になる性質を持つことを明らかにしていた。
今回の研究では、ウレイド高分子を細胞培養培地に添加しておき、培養温度をコントロールすることで、培養細胞を単層培養状態から3次元の塊状の培養状態へと切り替えることに成功した。37℃の培養温度では、ウレイド高分子は培地中で溶解しており、培養細胞は一般的な単層培養状態を保つが、25℃にすると、ウレイド高分子は非溶解状態となり、単層培養状態から3次元の塊状へと形態変化する。温度を37℃にすることで、単層培養状態へと戻すことも可能だ。
同研究グループは、今回の成果について、培養細胞の形態と機能を可逆的に制御しうる新たな手法として、細胞生物学分野のほか再生医療分野への貢献が期待されると説明している。